2006 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯性イカ類の社会システムに関する比較行動学的研究
Project/Area Number |
18580188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Keywords | イカ類 / 社会システム / 行動 / 飼育 / 脳 |
Research Abstract |
動物の知性の進化について、社会集団内における他個体との交渉で賢く振る舞う個体が適応的となり、これが知性獲得の原動力となったという「マキャベリ的知性仮説」が注目されている。本研究は、発達した神経系と巨大脳という知性基盤を有し、群れ行動など発達した社会的外観を示すイカ類について、マキャベリ的知性仮説を適用して個体間に複雑な交渉があるとの予測のもとに、イカ類が具体的にどのような構造と役割を有する社会を形成しているのか、すなわち、イカ類の社会システムの実態とその進化的背景を行動学的に探ることを目的とした。 上記目的達成のために、平成18年度は「アオリイカにおける社会システムの解明」を目標として以下の成果を得た。 初めに、社会性を表す群れ行動に注目し、その形成過程を艀化後のアオリイカを継続観察することから調べた。これにより、艀化時点では個体の遊泳力も弱く行動はランダムであるが、艀化後23日齢より各個体が定位し、複数個体がパラレルに遊泳するなど、群れ行動が艀化後の時間経過に伴い形成されることが明らかとなった。次に、アオリイカ若齢集団を対象に、個体識別による群れ内個体間の関係を主に摂餌場面における順位制という観点から調べた。これによると、同一日齢群であっても30日齢を越えると伸サイズに変異が生じるようになり、摂餌場面では常に大型個体が最初に摂餌していた。また、大半の摂餌場面で大型および中型個体は高い頻度で摂餌していたのに対し、小型個体はほとんどの摂餌場面で低い頻度でしか摂餌していなかった。このように、本種では体サイズ依存的な順位制が群れ内に形成されることが明らかとなった。 なお、平成19年度に使用予定の「イカ類隔離実験水槽」および「顕微鏡用CCDカメラ」を琉球大学理学部内に設置して試運転を行い、最適条件を確認した。
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