2007 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯性イカ類の社会システムに関する比較行動学的研究
Project/Area Number |
18580188
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 University of the Ryukyus, 理学部, 教授 (30342744)
|
Keywords | イカ類 / 社会システム / 行動 / 飼育 / 脳 |
Research Abstract |
動物の知性の進化について、社会性が知性獲得の選択圧となったというマキャベリ的知性仮説が提案されている。本研究は、巨大脳という知性基盤を有し、群れ行動など社会的外観を示すイカ類についてマキャベリ的知性仮説を適用し、イカ類が具体的にどのような構造と役割を有する社会を形成しているのか、すなわち、イカ類の社会システムの実態とその進化的背景を行動学的に探ることを目的とした。 上記目的達成のために、平成19年度は「熱帯性イカ類における社会システムの変異の解明」を目標として以下の成果を得た。 初めに、熱帯性イカ類における社会性レベルを検証するため、社会性を現す群れ形成の度合いが異なる頭足類8種(ジンドウイカ科2種、コウイカ科1種、マダコ科5種)を対象に、自己鏡映像への反応を比較した。その結果、社会性と考えられるジンドウイカ科では鏡面へのタッチ行動や鏡近傍への定位など自己鏡映像に高い関心行動が見られたのに対し、非社会性と考えられるマダコ科では自己鏡映像に対する関心行動は見られなかった。また、半社会性と考えられるコウイカ科では自己鏡映像に対する関心行動が観られたが、鏡面へのタッチ行動はジンドウイカ科と比べると攻撃的であった。 次に、熱帯性イカ類の社会性と知性の種間変異がそれら特性を司る脳の構造に如何に反映されるかを探るため、上記の頭足類について脳の構造を解剖学的に比較し脳葉容積を比較した。その結果、自己鏡映像に強い関心を示したジンドウイカ科およびコウイカ科では、視覚記憶に関わるとされる垂直葉がマダコ科に比べてよく発達していた。一方、マダコ科では触覚記憶に関わるとされる下前頭葉がよく発達していた。 以上のように、頭足類の社会性レベルの相違は自己鏡映像への関心行動の違いとして現れ、それらの違いは、行動基盤である脳の形態にも反映されていることが示された。
|