2007 Fiscal Year Annual Research Report
海水の温暖化に伴う養殖ブリの筋肉白濁現象の発生機構の解明-酵素学的アプローチ
Project/Area Number |
18580207
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
原 研治 Nagasaki University, 水産学部, 教授 (10039737)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 勝康 長崎大学, 水産学部, 教授 (20171712)
長冨 潔 長崎大学, 水産学部, 教授 (40253702)
浜田 友貴 長崎大学, 水産学部, 准教授 (90380831)
|
Keywords | 養殖ブリ / やけ肉 / プロテアーゼ / 組織化学 |
Research Abstract |
本年度は、"やけ肉"魚の筋肉特性、筋肉タンパク質の崩壊とそれに関わるプロテアーゼを測定した。 9月(やけ肉)と2月(コントロール)に養殖場で飼育した養殖ブリ二年魚を脊髄破壊(即殺)と苦悶死で致死させた。それらの筋肉を30℃で保存し、経時的に背部普通筋を採肉して、感覚色度、圧出水分、pHを測定し、やけ肉を判定した。それらの魚体から筋原線維タンパク質及びコラーゲンを調製しSDS-PAGEにて分解の度合いを調べた。同時にカテプシンやコラゲナーゼ活性を測定し、やけ肉へのプロテアーゼの関わりを調べた。 その結果、夏季のブリは致死方法を問わず30℃での保存期間中、4時間以内にやけ肉が発生することが明らかとなった。一方、冬期の苦悶死のブリでは6時間程度、即殺ブリでは24時間でやけ肉が発生することが分かった。つまり、やけ肉発生には養殖場の水温と致死条件が大きく関わることが明らかとなった。 筋原線維タンパク質は、夏季即殺ブリは保存4時間から、苦悶ブリでは2時間から分解が増加した。筋原線維タンパク質の分解とやけ肉発生は呼応していた。一方、冬期ブリでは顕著な変化は認められなかった。筋原線維タンパク質の分解はカテプシンによる可能性が考えられたため、次に、これらのプロテアーゼ活性を測定した。その結果、予想に反し、夏季のやけ肉ブリのカテプシンB及びL活性は冬期のブリに比べ低かった。しかしながらカテプシンB活性はカテプシンL活性より4倍高く、ブリ筋肉ではカテプシBが主要な酵素であることがわかった。 次年度では、やけ肉中の酵素活性がコントロールより低かった原因が、やけ肉のドリップと共に酵素が流出したためなのか、あるいはやけ肉のpH低下により筋肉タンパクが脆弱になり、その結果、酵素活性が弱くとも筋原線維自体が壊れやすくなっているのかを明らかにする予定である。
|