2008 Fiscal Year Annual Research Report
麻ひ性貝毒の生体成分との反応性に着目した毒の分解に関する研究
Project/Area Number |
18580210
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 繁 Kitasato University, 海洋生命科学部, 准教授 (20170748)
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Keywords | 麻ひ性貝毒 / サキシトキシン / 酸化分解 / アミノプリン / ポリフェノール / 没食子酸プロピル |
Research Abstract |
麻ひ性貝毒(PSP)は塩基性水溶液中では容易に酸化され、無毒のプリン誘導体を与えるが、弱酸性から中性の水溶液中では安定である。代表的なPSP成分であるサキシトキシン(STX)は最も安定で、弱酸性水溶液中では室温で数ヶ月以上ほとんど毒性を失わない。昨年度までに、種々の没食子酸誘導体や茶カテキンなどのポリフェノールを含む中性水溶液中でSTXが速やかに消失すること、これらポリフェノールはSTXやneoSTXなどの11位還元型のPSP成分を消去するが、GTX群などの11位に硫酸エステルを持つPSP成分には作用しないことを明らかにしている。反応系にアスコルビン酸などの酸化防止剤を混合することによりこの作用が抑制されることから、上記のポリフェノールはSTX群を酸化分解しているものと考えられる。本年度は、ポリフェノールの作用によりSTXがら生じる成分の本体を同定しそのSTXの消失機構を明らかにすることを目的とした。1μmolのSTXを、没食子酸プロピルを0.1%含む中性リン酸緩衝液1mLに混合し、沸騰浴中で3分間加熱した。混合液を酢酸エチルで抽出し、水相のUVスペクトルおよびMS/MS上でQ1 scanならびにproduct ion scanを測定し、STXの酸化分解物のそれらと比較した。没食子酸プロピルとSTXの中性条件下での反応混合物は、1mMのSTXを0.01M水酸化ナトリウムを含む0.1%H_2O_2中で3分間煮沸して得られるプリン誘導体と同様のUVスペクトルおよび同一の準親イオンm/z296([M+H]^+)と、同イオンから得られるプロダクトイオンm/z235を与え、ポリフェノールによりSTXが酸化分解物に変換されていることが確認された。
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