Research Abstract |
茨城県・県央地域に中心となるY社が立地するネットワーク組織である,I研究会の設立と運営について代表者から聞き取り調査を行い,会員農家46名に対して,組織に加入した理由,加入後の評価,I組織以外の販売チャネルなどの項目について,アンケート調査を実施した。I研究会は,加入に当たって,GAP(適正農業規範)という,農産物の安全性,環境への配慮,生産者の安全と福祉,農業経営と販売管理などについて,一定水準を満たしていることを証明する経営認証を取得することを条件としている。研究会代表のT氏によれば,共同販売を目的としたI研究会において,農産物の品質を保証し,有利に販売することを目的に,この規約を盛り込んでいる。会員の大半は2,000万円以上の農産物を鮫売している。I研究会経由の販売は,ほぼ契約生産であるため,会員は,農産物を安定して作り計画どおりに出荷できる技術力を身につけている必要があり,経営規模の大きさも必須である。I研究会の販売は,量販店(チェーンストア)2系列と外食向けの卸であり,それぞれの販売先にどの農業経営が供給するかは,T氏が決定している。農産物の集荷・配送および会計業務は,I研究会の中核となるY社に委託し事務所も兼用している。I研究会内部の自己点検として,残留農薬分析,硝酸体窒素測定,成分分析などを実施している。研究会の会員の中には,他の販売チャネルを複数持つものも多く,I研究会への販売はメリットの比較考量の上で行われている。以上のようなI研究会の事例は,ネットワーク組織の一般的な特徴と合致しており,会員の加入・脱退が頻繁な事実は,ネットワーク組織が会員に与える誘因と会員としての貢献が厳密に考慮されていることを端的に示していると考えられ,ネットワーク組織の成立要因として,組織と会員との誘因・貢献のバランスが重要であることが明らかになった。
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