Research Abstract |
米政策改革の一環として,品目横断的経営安定対策が導入され,日本版直接支払い制度がスタートした。本研究では,こうした制度変更に伴う担い手育成対策を,個別経営タイプと集落営農タイプという異なる担い手像の競争と協調として把握し,特に,稲作・転作地における農地利用調整の実態と奨励金等の配分システムのあり方として研究した。農地管理システムの課題としては,直接支払いは人単位であり,従来の土地単位の管理のみでは十分な調整機能を果たし得ず,加えて,先行的に限定された(転作)作目のみでスタートしたため,人単位(担い手の把握),土地単位(権利関係の把握),作目単位(作付品目の把握)の3重の管理が求められていることを明らかにした。従来の農地管理は,権利関係は農業委員会,作付関係は農協組織,担い手育成は行政と分立していたが,こうした3つの側面を統合する市町村農業公社の独自の機能を強調した。また,産地間競争が激化する下で,こうした農地管理システムとともに,販売起点の地域戦略作りが求められており,特に実需者との連携方式を模索する産地戦略が重要であることを指摘した。従来,独自販売を目指す担い手や,市場出荷を中心とした農協の集荷戦略は必ずしも一致していなかったが,産地単位で市場出荷と契約取引,加えて直売等の地産地消を組み合わせた戦略の共有化が必要となっている。こうした産地戦略の母体としては,行政と農協組織,及び,土地利用型担い手を中心とした戦略母体が必要であり,そうした母体として市長村農業公社の重要性を指摘した。以上の,農地管理システムと販売戦略の母体として農業公社が自立するためには,従来の中間保有機能を活かした農地利用調整機関にとどまることなく,自治体農政の戦略機関としての位置づけが必要であり,加えて,そうした機能を果たすべき体制整備,特に人材の育成確保が急務となっている。農業関係機関の窓口一本化の具体化として,その果たすべき機能と組織形態が今後の検討課題である。
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