Research Abstract |
本研究の目的は,"「地産地消」は,食の問題を入り口に,地域の様々な社会問題を解決する可能性を持つ"という仮説を検証し,その上で現状の地産地消が食の問題にとどまらない,新しい地域社会の持続的な管理手法と地域社会のあり方を示す取り組みとして発展するための道筋,そしてそこでの必要な担い手像を示すことである。 研究期間の最終年度である19年度は,研究とりまとめに向けての,資料、文献整理とこれまで収集したデータ整理・分析,さらにアメリカでの補足調査を実施した。またこれまでの研究成果をとりまとめ,学会誌論文の執筆をおこなった。 研究成果として取りまとめた主な3論文の概要は以下の通りである。 (1)食の生産から消費まで相互に連携させてローカルフードシステムを構築し,持続的な社会・共生社会をもたらすための理念を提起した。「ローカル」と「フードシステム」を結合させ「ローカルフードシステム」を構築する意味とその重要性,さらに,そのために必要な主体の条件を整理した。これら一連の流れを日米の事例の比較分析から示した。 (2)地産地消運動の参加者への聞取り調査から,消費者の食への関心について分析した。食の安全性への関心の高まりを背景に,地球環境問題などの規模の大きな問題に興味関心が向けられる一方で,身近な地域における,食の生産状況と地域環境への影響,地域農業や地域社会の運営には関心が薄いことがわかった。人々の意識を地域に向ける必要性,そのためには地域で食と農をつなげるシステム作りの重要性を指摘した。 (3)日本における地産地消運動に至る農業運動の展開過程とそれぞれの運動の発足の背景,政策的な位置づけに関する特徴を,アメリカにおける農業運動と比較しながら整理した。食や地域の概念が社会正義,民主的な地域運営の手段であるとのアメリカの認識に対して,日本では生産品の販売手段としての認識が相対的に大きいことが明らかになった。
|