2006 Fiscal Year Annual Research Report
農業水利改革の貿易・資源・環境へ与える影響に関する比較制度分析
Project/Area Number |
18580218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生源寺 眞一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (40196580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 康博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助教授 (50202213)
塩谷 弘康 福島大学, 行政政策学類, 教授 (50250965)
木下 幸雄 岩手大学, 農学部, 助教授 (90323477)
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Keywords | 農業水利 / 比較制度分析 / 法社会学 / 共同体 / 環境保全 / 水利権 / 市場化 / 渇水 |
Research Abstract |
日中豪の現地調査を行い、それぞれの地域で直面する農業水利問題とそのことが引き起こす農業生産、資源管理、環境保全上の課題を詳細に比較検討した。また豪州を中心に進められている水利制度改革に情報収集に努め、この制度モデルを水利改革考察のためのベースラインとすることにした。調査活動の概要は以下の通りである。 1)日本 四国・香川用水とその中下流部に位置する香川県内の満濃池ならびに三郎池のため池システムを現地調査した。香川用水の通水での水需給の緩和後、かつての用水維持管理ルールは消滅したが、大渇水(1994年)時に、危機管理的手段として復活した。システムに埋め込まれた共同体ルールの固着性をあらためて確認しその生成のメカニズムを検討した。 2)中国 雲南省昆明市で都市開発と農地・農業用水の転用問題を現地調査した。急速な経済発展の中、昆明市は大規模な都市開発が進み、都市の水需要は急増して水源を求めて農業用水が転用されている。一方、都市部の拡大でかつて上水道用水源だった近郊の湖に様々な排水が流入し、深刻な汚染を引き起こして利用されなくなった。「水汚染」は都市化におけるもう一つの水需要であり、汚染対策はある種の水資源開発となる。ダイナミックな経済構造の変革期における水利用・保全・開発のあり方を日本の経験と比較しながら分析する意義が明らかになった。 3)豪州 ニューサウスウエールズ州のマレー灌漑会社の調査を行った。同社は1995年民営化した農家主体の株式会社で、農業用水の卸売機能をもつ事業体かつ水利権を管理する組織である。水利権取引のタイプは多様で期間取引(年単位水量取引)、恒久取引(水利権取引)があるが、取引価格は水利権取引所でのオークションで決定する。世界的にみても最も革新的な水利制度改革であり、市場取引化の典型例として比較分析のベースラインになることが明らかになった。
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Research Products
(6 results)