2008 Fiscal Year Annual Research Report
低所得層のフードセキュリティとソーシャル・キャピタル
Project/Area Number |
18580224
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 章 Shimane University, 生物資源科学部, 准教授 (50346376)
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Keywords | フードセキュリティ / 社会関係資本 / 経済ショック / 途上国 |
Research Abstract |
今年度は,深刻な貧困問題を抱える3カ国(ネパール、バングラデシュ、東ティモール)を事例として、貧困層のフードセキュリティに影響を及ぼす諸要因について検討した。それぞれの分析結果はつぎのとおりである。 1ネパール統計局が同国において実施した大規模標本調査の個票データを使用した。1人当たり食料消費額を従属変数として重回帰分析を行った結果、1)世帯主の教育水準が高い世帯、2)農地面積が大きい世帯、3)動産資産額が多い世帯、4)山間部ではなく平野部に居住している世帯、5)上位のカーストに属している世帯、6)家族員数が少ない世帯、7)自家消費を目的とした家庭菜園をしている世帯ほど、フードセキュリティの水準は高いことが確認された。 2IFPRIと世界銀行がそれぞれバングラデシュと東ティモールで実施した大規模標本調査の個票データを使用した。雨季における食料困窮月数を従属変数として切断型ポアソン回帰を適用した結果、1)世帯主の教育水準が高い世帯、2)フォーマル部門への就業者数が多い世帯、3)社会関係資本の水準が高い世帯ほど、雨季におけるフードセキュリティの水準は高いことが明らかとなった。反対に、暴動等による経済ショックや洪水・冠水、立ち退き等の一時的ショックを受けた世帯ほど、雨季における食料摂取状況が悪化することも明らかとなった。 3世界銀行が東ティモールで実施した大規模標本調査の個票データを用いた。対数変換後の1人当たり食料消費支出を従属変数として分位点回帰を用いて分析した結果、1)世帯主の教育水準が高い世帯、2)世帯内における非農業部門への就業者数が多い世帯、3)1人当たり資産額が高い世帯、4)家族員数が少ない世帯、5)家畜・家畜生産物・家庭菜園での生産物の自家消費を行っている世帯、6)社会関係資本の水準が高い世帯ほど、フードセキュリティの水準は高いことが確認された。
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