2009 Fiscal Year Annual Research Report
低所得層のフードセキュリティとソーシャル・キャピタル
Project/Area Number |
18580224
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石田 章 Shimane University, 生物資源科学部, 准教授 (50346376)
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Keywords | フードセキュリティ / ソーシャル・キャピタル / フィリピン |
Research Abstract |
今年度は、深刻な貧困問題を抱えるフィリピン・ミンダナオ島を事例として、IFPRI(国際食料政策研究所、在ワシントン)などがフィリピン・ミンダナオ島北部のブキドノン州において実施した世帯調査の個票データを用いて、貧困層のフードセキュリティに影響を及ぼす諸要因について検討した。食料貧困ラインを基準とする分位点回帰(qunatile regression)を適用して分析した結果、世帯レベルのフードセキュリティに対して、世帯主の教育水準、農地所有、金融資産の保有、裏庭や空き地等を利用した自給的な食料生産、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の水準がプラスの影響を与えており、反対に世帯員数と負債がマイナスの影響を与えていることが明らかとなった。 それでは、こうした分析結果を踏まえると、どのような政策提言が可能であろうか。世帯主の教育水準の向上や農地所有面積の拡大を短期間で政策的に実現することは極めて困難である。それゆえに、世帯レベルでのフードセキュリティを向上させるうえで、コニュミティ活動に対する積極的支援が効果的であろう。また、金融資産の保有がプラスの影響を及ぼすという分析結果も勘案すると、積立貯金制度による貯蓄形成やソーシャル・キャピタルの蓄積という点でも高く評価されているグラミン銀行方式の導入・推進も有効であろう。最後に、自給的な食料生産に対する技術支援や補助制度の導入も一定の効果があると考えられる。
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