Research Abstract |
リノール酸(LA)から共役リノール酸(CLA)への異性化能が高く,CLAを水素添加しないButyrivibrio fibrisolvensの新菌株,即ちCLA生成能が極めて高い菌株を発見した。本菌株をマウスに経口投与したところ,体脂肪中のCLAが増加した。従って,本菌株はブタやニワトリの肉や卵のCLA含量を増加させるのに有効と考えられる。ウシの場合はバクセン酸(VA)が吸収されれば,動物の体内でCLAに転換されるので,VAの吸収を増やせば乳肉のCLA含量を増加させ得る。我々は,砿からVAへの水素添加能が高いB.fibrisolvensの新菌株を見つけた。しかし,ウシの場合はルーメン内でVAは更に水素添加されてしまうので,VAが水素添加を受けないように保護するために,VAを菌体に取り込ませる試みを行った(即ち,生菌を用いてVAをマイクロカプセル化する)。その結果,腸内細菌およびルーメン菌の中からVA取り込み能が極めて高く,しかも水素添加能のない菌株を見出した。一方,VA取り込み能を増強するための基礎研究として,細菌における脂肪酸輸送の機構についても検討した。即ち,脂肪酸取り込みと脂質代謝調節に関与する因子としてFadD(アシルCoAシンセターゼ)に着目し,その遺伝子をクローニングし,大勝歯で発現させることに成功した。しかし,アシルCoAシンセターゼ活性の測定法が確立されていないため,その検討を行った。また,B.fibrisolvensがルーメン内で他菌との競合に打ち勝って増殖するためには,他菌の増殖を抑制するような物質を産生すれば好都合である。そこで,本菌により抗菌物質が産生されるか否かを検討した結果,バクテリオシン様の抗菌物質の産生が示唆された。
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