2008 Fiscal Year Annual Research Report
カンピロバクター属細菌における蛋白の糖鎖修飾システムが持つ生物学的意義の解析
Project/Area Number |
18580312
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
角田 勤 Kitasato University, 獣医学部, 准教授 (80317057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 伸二 北里大学, 獣医学部, 教授 (80137900)
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Keywords | カンピロバクタージェジュニ / 糖鎖修飾 / 病原性 |
Research Abstract |
これまでに、Campylobacter jejuniのN結合型糖鎖修飾システムの持つ生物学的意義を調べてきた。最終年度はCj1497c以外の糖蛋白の解析を行なった。Cj0143cは、アミノ配列の類似性からE. coliにおけるABCトランスポーターのための亜鉛結合蛋白であるZnuAのオルソログであると推測された。腸管定着試験においてCj0143c破壊株は盲腸における定着能が著しく減少していた。培地中の亜鉛濃度を変化させて菌を培養した結果、Cj0143cの転写レベルは亜鉛濃度の減少に伴い増加した。亜鉛の欠乏した培地での増殖率を野生株と比較した結果Cj0143c欠損株の増殖率は著しく減少した。以上のことからCj0143cはC. jejuniの亜鉛欠乏下での生育に必要な蛋白であると考えられた。Cj0143cのアミノ酸配列から28番目のアスパラギン残基が糖鎖による修飾を受ける可能性が考えられた。そこでsite-directed mutagenesisによりこのアスパラギンをグルタミンに置換した変異型のCj0143cを発現するよう変異遺伝子をプラスミドで導入した。その結果、このN28が糖鎖修飾を受けていることと、変異型Cj0143cは糖鎖修飾を受けないことがウエスタンブロット解析により示唆された。しかし、in vitroにおける細菌の生育の際、Cj0143cの糖鎖の有無はCj0143c自体の安定性に影響を与えないことが示唆された。また、糖鎖はCj0143cの亜鉛結合性などの機能にも影響を与えないことが明らかとなった。そこで、in vivoにおける糖鎖のCj0143cへの影響を調べるために、変異型Cj0143cを発現する株を雛に感染させて、感染1週間後の盲腸での菌の定着を調べた。その結果、変異型Cj0143cと野生株との間に盲腸での定着能に差が見られず、in vivoでもCj0143cの糖鎖の明瞭な機能を見いだすことはできなかった。真核細胞においても多くの糖蛋白蛋白の糖鎖修飾には明瞭な機能が見いだせないことが知られており、今回の研究により原核生物でも同様な現象が見られることが明らかとなった。
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