2007 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム紅河デルタ農村の地下水ヒ素汚染に対する大量化学肥獲投与の影響評価
Project/Area Number |
18580330
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
黒澤 靖 Kyushu University, 熱帯農学研究センタ, 准教授 (70128114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江頭 和彦 九州大学, 大学院・農学研究, 教授 (20038293)
福田 信二 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教 (70437771)
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Keywords | 紅河デルタ / アンモニウム態窒素 / 化学肥料 / 地下水 / ヒ素 / 水質基準 / 還元溶出 / 窒素同位体比 |
Research Abstract |
ベトナム紅河デルタ農村で行った地下水ヒ素汚染に関する調査結果を、2007年9月にハノイで行われたセミナーで発表した。即ち、調査した複数の農村のうち、ハノイ市南部の農村では、井戸水のヒ素濃度がWHO水質基準(10 ppb以下)を超え、各農村の平均値は60〜80ppの範囲であった。地下水の酸化還元電位とヒ素濃度の関係から、地下水の還元的状態が強まるにつれ、井戸周辺の地層から地下水中により多くのヒ素が溶出していることが示された。また、地下水を還元的にする要因として、農地への窒素化学肥料の投入と畜産廃液の浸透が考えられた。2007年6月には、ベトナム南部ドンナイ省の農村で、井戸水のヒ素濃度を調査した。ここでも、ハノイ付近の農村と同様、農地に大量の化学肥料が投入されていた。しかし、井戸水のヒ素濃度は、調査した15地点で0.1〜0.5ppb、と低かった。地下水のヒ素汚染は見られず、その背景として地層がヒ素を含まないことが考えられた。2008年3月には、ベトナム南部メコン川沿いにあるドンタップ省の農村で、地下水ヒ素濃度を調査した。調査した7箇所の井戸水のヒ素濃度は250〜2,500ppbの範囲で、極めて高かった。この高いヒ素濃度が発生する背景として、地層がヒ素を大量に含むことが考えられた。この農村でも農地への化学肥料投入量は多かったが、畜産農家の井戸水でもヒ素濃度は高く、地下水ヒ素汚染の背景には、化学肥料投入と畜産の影響の両面が考えられた。地下水の酸化還元電位は60〜100mVと低く、地下水は還元的状態であった。以上の結果より、地下水のヒ素汚染は、高濃度のヒ素を含む地層と接している地下水が何かの要因で還元的になり、ヒ素が地下水へ溶出することによると考えられた。投与された化学肥料は、地下水の還元化を進める要因として作用し、地下水のヒ素汚染をもたらす可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)