Research Abstract |
様々な糖鎖抗原が,癌スクリーニング,診断,治療経過のモニタリング,及び再発予知のための特異的腫瘍診断マーカーとして用いられているが,それらの糖鎖抗原の中には,糖鎖部分の詳細構造,コアタンパク質や,体内での役割等が明らかになっていないものも多い.シアリルルイスx(NeuAcα2-3Galβ1-4(Fcuα1-3)GlcNAc)は,構造特性解析や機能解析が進んでいる糖鎖抗原の一つであり,細胞接着分子セレクチンのリガンドであることや,細胞の癌化に伴って増加し,癌細胞の血行性転移に係わっていることなどが知られている.しかし,現在までにシアリルルイスx構造を持つタンパク質として同定されたものは多くはない.従って,癌化に伴ってシアリルルイスxの割合が増加するタンパク質,あるいは,発現量が増加するシアリルルイスx結合タンパク質を特定し,それらの糖鎖構造を明らかにすることは,癌転移機構の解明や,特異性の高い診断マーカーや治療法の開発につながるものと期待される.本研究は,グライコミクスの技術を用いて,様々な癌細胞株が発現・分泌するシアリルルイスx付加タンパク質の同定と糖鎖構造解析を行うものである. 平成18年度は,ウエスタンブロッティングにより様々なヒト培養細胞におけるシアリルルイスx結合タンパク質の発現を調べ,大腸癌由来T84細胞に複数のシアリルルイスx付加タンパク質が発現していることを明らかにした.2年目は,T84細胞に発現している糖タンパク質をWGAレクチンカラムで濃縮した後,サイズ排除HPLCで分画することによって,シアリルルイスxが結合している約150kDaの糖タンパク質を効率的に濃縮できることを見出した.現在,このタンパク質の同定を試みている.
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