Research Abstract |
癌スクリーニング,診断,治療経過のモニタリング,及び再発予知のための特異的腫瘍診断マーカーとして,様々な糖鎖抗原が用いられているが,それらの糖鎖抗原の中には,糖鎖部分の詳細構造,コアタンパク質や,体内での役割等が明らかになっていないものも多い.シアリルルイスx(NeuAcα2-3Galβ1-4(Fcuα1-3)GlcNAc)は,構造特性解析や機能解析が進んでいる糖鎖抗原の一つであり,細胞接着分子セレクチンのリガンドであることや,細胞の癌化に伴って増加し,癌細胞の血行性転移に係わっていることなどが知られている.しかし,現在までにシアリルルイスx構造を持つタンパク質として同定されたものは多くはない.癌化に伴ってシアリルルイスxの割合が増加するタンパク質,あるいは,発現量が増加するシアリルルイスx結合タンパク質を特定し,それらの糖鎖構造を明らかにすることは,癌転移機構の解明や,特異性の高い診断マーカーや治療法の開発につながるものと期待される.本研究は,グライコミクスの技術を用いて,様々な癌細胞株が発現・分泌するシアリルルイスx付加タンパク質の同定と糖鎖構造解析を行うものである. 平成20年度は,ウエスタンブロッティングにより,大腸癌細胞,膵臓癌細胞,乳癌細胞,白血病細胞等ヒト癌細胞株におけるシアリルルイスx結合タンパク質の発現を調べ,すべての細胞に共通して発現しているシアルルルイスx結合タンパク質が存在することを見出した.また,このタンパク質は正常細胞にも発現しているが,シアリルルイスxは結合していないことが明らかになった.さらに,2次元電気泳動及びLC/MS/MSにより,このタンパク質を同定することに成功した.
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