2006 Fiscal Year Annual Research Report
がんの増殖と骨転移におけるプロスタグランジンEの役割に関する研究
Project/Area Number |
18590048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
宮浦 千里 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 教授 (20138382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 全規 東京農工大学, 大学院共生科学技術研究院, 講師 (80401454)
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Keywords | 生化学 / がんの骨転移 |
Research Abstract |
がんの骨転移におけるプロスタグランジンE(PGE)の役割を明らかにするため、悪性黒色腫(B16メラノーマ)細胞を膜型PGE合成酵素遺伝子欠損マウスならびに野生型マウスに血行移入し、大腿骨への転移を調べた。また、B16細胞の増殖について、マウス皮下に移入して固形腫瘍を形成させると共に、培養系におけるB16細胞の増殖に対するPGEの作用も調べた。その結果、膜型PGE合成酵素遺伝子欠損マウスでは野生型マウスの場合と比較して、B16細胞の骨転移と腫瘤形成がいずれも抑制された。しかし、培養系におけるB16細胞の増殖はPGE添加による影響を受けなかった。膜型PGE合成酵素遺伝子欠損マウスの骨組織は刺激応答性のPGE産生が起こらない。従って、がん細胞の骨転移と増殖は宿主細胞が産生するPGEにより正の調節を受けており、宿主由来のPGEが低下すると転移と増殖が低下すると考えられる。また、骨組織のPGE作用を媒介するレセプターであるEP4の作用を遮断するEP4アンタゴニストをマウスに経口投与したところ、骨転移と皮下腫瘤形成がいずれも軽減した。従って、宿主細胞が産生したPGEはEP4レセプターを介して作用すると考えられる。しかし、EP4アンタゴニストは培養系におけるB16細胞の増殖に影響を与えなかった。従って、PGEはがん細胞に直接作用するのではなく、宿主細胞に作用して転移と増殖を抑制することが明らかになった。その標的細胞と作用メカニズムは今後の課題である。
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