2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18590058
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
井出 利憲 Hiroshima International University, 薬学部, 教授 (60012746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 志津子 広島国際大学, 薬学部, 助手 (80435065)
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Keywords | 幹細胞 / テロメラーゼ / 細胞不死化 / 血管内皮細胞 / hTERT / ヒト培養細胞 |
Research Abstract |
幹細胞はヒト体細胞の中では例外的にテロメラーゼ発現細胞で,分化能力を維持し長期増殖可能である。テロメラーゼが幹細胞にたいして特異な役割を持っている可能性について探求するため,増殖継続性に加えて分化能力維持に対しても,テロメラーゼが何らかの役割を果たす可能性を検討した。 従来からの研究として,ヒト臍帯由来の血管内皮細胞へのテロメラーゼ遺伝子(hTERT)導入細胞の解析をまとめた。従来,培養系では20から30回程度しか分裂できなかったが,増殖因子添加等の培養条件の検討によって,50から60回まで分裂可能回数を延長させることができた。hTERTを導入して強発現させると,テロメアの短縮もテロメア末端のGテイルの短縮も防がれ,その結果として分裂限界がなくなり,無限増殖能を獲得した。無限増殖能を付与された血管内皮細胞(不死化血管内皮細胞)では,本来の細胞が持っている分化機能の多くが維持されており,コラーゲンゲル内での毛細血管形成能なども示すことがわかった。つまり,無限増殖能と言う性質と,分化機能を発揮する細胞になる性質を備えた,幹細胞類似の細胞になっていた。 ただ問題なのは、血管内皮細胞にはわずかであっても染色体の異常が見られたことである。hTERTを導入したことによって染色体異常が生じたわけではなく,ヒト臍帯静脈から樹立した多くの正常血管内皮細胞株のほとんどや,正常細胞として市販されているヒトの動脈や静脈由来の正常血管内皮細胞の大部分にも,培養系に移した細胞では染色体異常が見られることが分かった。このことは,正常繊維芽細胞にもhTERT導入で不死化繊維芽細胞にも,ほとんど全く染色体異常が見られないことと大きな違いである。両細胞が示すこのような違いの原因は分からないが,血管内皮細胞に関しては,hTERTによる不死化細胞を正常な幹細胞のように用いることには問題があると考えざるを得ない。
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