2006 Fiscal Year Annual Research Report
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの新規機能の解明
Project/Area Number |
18590073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 助教授 (80230415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 郁夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40182969)
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Keywords | アシルCoA / リゾリン脂質 / ゴルジ体 / アシルトランスフェラーゼ / 逆反応 / CoA / Green fluorescent protein |
Research Abstract |
リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼは小胞体などの膜画分に存在しており、アシルCoAの脂肪酸をリゾリン脂質へ転移し、ジラジルリン脂質を合成する酵素(系)である。1-アシルリゾリン脂質を基質とした場合、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸のCoAに特異性が高いことから、元来、リン脂質に不飽和脂肪酸を導入する役割の酵素系とされてきた。しかし、研究の過程で、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ系酵素が逆反応を効率よく触媒することを発見した。本研究は、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ系酵素の逆反応の性状とその生理的な意義について研究した。 (1)リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼのゴルジ体への存在 ラット肝臓よりゴルジ体膜を調製した。様々なリゾリン脂質を基質とするアシルトランスフェラーゼ活性が、ミクロソーム画分とほぼ同じレベルでゴルジ体膜に存在することが示された(山下)。 (2)リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの逆反応 ラット肝ゴルジ体膜をCoAとインキュベートすると、大量のアシルCoAが生成した。同時に、リゾボスファチジルコリンとリゾホスファチジルイノシトールも産生した(山下)。アシルCoAとリゾリン脂質の生成には、アルブミンの添加が必須であることから、この反応にリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの逆反応が関わることが考えられた。すなわち、CoAの添加は、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの逆反応を誘導し、膜リン脂質を分解して、リゾリン脂質とアシルCoAを生成する。また、正反応により、リゾリン脂質とアシルCoAは、もとのリン脂質を再合成することが考えられた(山下)。 (3)CoAによるゴルジ体の観察 ゴルジ体糖転移酵素をGreen fluorescent protein (GFP)で標識したものを、HeLa細胞に導入して、ゴルジ体の顕微鏡下、可視化することに成功した(山下、和田)。細胞にCoAを導入すると、ゴルジ体の崩壊現象が観察された。CoAのSH基を不活性化したものを導入した場合は、ゴルジ体の崩壊現象は観察されないことから、この現象はCoAに特異的なものであることが確かめられた。また、時間経過とともに、小胞体が徐々にGFPで染色され、ばらばらになったゴルジ体が小胞体に輸送されることが示唆された。 (4)考察 CoAの添加がリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの逆反応を誘導し、膜リン脂質を分解して、リゾリン脂質とアシルCoAを生成する。ゴルジ膜リン脂質の一過的、可逆的な分解、あるいはアシルCoAなの産生が、ゴルジ体の崩壊現象をひきおこすことが考えられた。
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Research Products
(1 results)