Research Abstract |
1.気管支平滑筋過敏性発症に関与するサイトカイン受容体の同定 平成18年度までに構築したIL-13Ralphal siRNA発現ベクターを用いて,平成19年度交付申請時の研究計画書の通り,このsiRNA発現ベクターのIL-13Ralphal knockdown効力を確認して,in vivo適用の可能性について検討を行った。(1)培養ヒト気管支平滑筋細胞を用いたIL-13Ralphal siRNA発現ベクターの効力確認 培養ヒト気管支平滑筋細胞においてIL-13Ralphal,IL-13Ralpha2およびIL-4Ralphaが発現していることをRT-PCR法を用いて確認した。この細胞にIL-13Ralphal siRNA発現ベクターを導入したところ,IL-13Ralphalのdownregulationが観察され,細胞レベルでknockdownが可能であることを確認することができた。(2)マウス摘出気管支平滑筋組織を用いたIL-13Ralphal siRNA発現ベクターの効力確認 上記ベクターを摘出気管支平滑筋組織に適用してその効力測定を試みたが,組織中の気管支平滑筋細胞への導入効率が悪く,さらなる最適化が必要であることが判明した。一方,同組織の上皮細胞層にはある程度の導入が確認できた。(3)マウス個体を用いたIL-13Ralphal siRNA発現ベクターの効力確認 上記ベクターをマウスに経鼻的気管内投与することによりin vivo適用してその効力測定を試みたところ,気道上皮層にベクター導入できることを確認した。しかしながら,その導入効率はまだまだ低く,導入効率を高めるためのさらなる検討が必要である。さらに,ベクター処置のみあるいはtransfection試薬の処置のみで,正常動物に気道炎症が惹起されてしまうことが判明し,実際の遺伝子治療への応用に向けて,発現プフスミドベクターではなくsiRNA自体を用いる,transfection試薬を改良するなど,さらなる検討が必要である。 2.気管支平滑筋におけるRhoA転写機構の解明 平成18年度までの検討により,STAT6がRhoA発現調節に深く関与している可能性を示唆してきた。さらに詳細に,気管支平滑筋におけるRhoA転写機構を解明するために,以下の検討を行った。(1)気管支平滑筋におけるRhoA転写開始点およびpromoter領域の同定 気管支平滑筋組織より抽出したRNAサンプルを用いて,5'-RACE法によりRhoA mRNAの転写開始点を同定した。ゲノムDNAサンプルよりPCR法を用いて,同定した転写開始点より3kbp上流の配列をルシフェラーゼレポータープラスミド(pGL4)に構築することに成功し,STAT6やNF-kBにより転写が制御されている可能性を示唆した。(2)気管支平滑筋におけるRhoA発現を調節している転写因子の同定 プロテインアレイを用いて抗原刺激により気管支平滑筋において活性化される転写因子の検討を行ったところ,STATsやNF-kBを含む多数の転写因子が活性化されることが明らかとなった。さらに,気管支平滑筋細胞におけるRhoA発現増加はSTAT6阻害薬により抑制され,RhoA発現を調節している転写因子の一つとしてSTAT6を同定した。
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