Research Abstract |
細胞は環境ストレスに応答して,細胞質にストレス顆粒と呼ばれる凝集体を形成することが知られている.以前に我々は,mRNA不安定化因子であるTIS11及びそのファミリー分子であるTIS11bとTIS11dのストレス顆粒への局在を見出している.今回,TIS11ファミリー分子のストレス顆粒への移行に対する14-3-3タンパク質の役割について調べた. TIS11ファミリー分子の野生型あるいは変異型をコードするcDNAを組み込んだGFP融合タンパク発現ベクターを作製し,COS7細胞に遺伝子導入した.16時間後に細胞に対して,熱ストレス,酸化ストレス,エネルギー枯渇ストレスを与え,ストレス顆粒のマーカー分子であるTIA-1の局在を指標として,TIS11ファミリー分子の細胞内局在を解析した。 TIS11ファミリー分子の全長は,熱ストレスやエネルギー枯渇ストレス条件下でストレス顆粒に局在したが,酸化ストレス条件下では局在しなかった.また,TIS11ファミリー分子の欠失変異体のストレス顆粒への移行を解析したところ,TIS11ファミリー分子のZn^<2+>フィンガー領域は,酸化ストレス条件下でもストレス顆粒移行活性を示した.しかし,C末端領域とZn^<2+>フィンガー領域を含む欠失変異体が,酸化ストレス条件下においてストレス顆粒移行活性を示さなかったことから,C末端領域にストレス顆粒移行活性を抑制する領域の存在が考えられた.そこで,C末端領域に存在する14-3-3タンパク質の結合モチーフに変異を加えたところ,ストレス顆粒移行活性阻害が阻止された.以上のことから,酸化ストレス条件下において14-3-3タンパク質はTIS11ファミリー分子のC末端領域に結合し,ストレス顆粒移行活性を阻害することが示唆された.
|