Research Abstract |
細胞膜裏打ちタンパク質PDZK1は,これまでの加藤らの検討から,多くの薬物トランスポーターの制御因子であることがin vitroで示されているが,in vivoでは実証されていなかった。そこで今年度は,PDZK1の遺伝子欠損マウスを用い,その役割の解明を試みた。欠損マウス小腸上部では,ペプチドトランスポーターPEPT1やカルニチントランスポーターOCTN2が刷子縁膜から消失し,PEPT1は細胞内にも局在が認められた。特に小腸上部では刷子縁膜に発現するトランスポーターの発現量も低下していた一方,小腸中部での発現量は,正常マウスとさほど違いがなく,小腸下部では細胞膜での局在にも違いがなかった。それぞれのトランスポーターの基質であるcephalexin と carnitineの消化管吸収は欠損マウスで遅延していた。これらの結果は,PDZK1が特に小腸上部において,PEPT1とOCTN2の細胞膜表面での局在に必須であることを示した。 群馬大学原田彰宏教授らの作成した低分子量GTP結合タンパク質Rab8の遺伝子欠損マウスでは,離乳後に栄養吸収不全が認められたことから,その原因を明らかにするため,反転腸管を作成し,トランスポーターによる刷子縁膜からの基質取り込み能を観察した。その結果,PEPT1の基質であるglycylsarcosine,グルコーストランスポーターSGLT1の基質であるalpha-methylglucoseの取り込みがRab8欠損マウスで,ほぼ完全に消失していた。免疫染色の結果,これらトラシスポーターの刷子縁膜での発現が消失しており,Rab8がPEPT1およびSGLT1の細胞膜表面での局在に必須であることが示された。 このようにPDZK1,Rab8ともに,-つの分子が複数のトランスポーターを制御することから,複数のトランスポーターがネットワークとして機能する可能性が示唆された。
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