2006 Fiscal Year Annual Research Report
腸神経系による薬物吸収制御に関する研究:特殊輸送系を介する分泌の制御機構の解明
Project/Area Number |
18590142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
桧垣 和孝 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (60284080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 聡城郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10025710)
大河原 賢一 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (30291470)
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Keywords | 腸神経系 / P-glycoprotein / adrenaline / clonidine / 粘膜下神経叢 / 筋層間神経叢 / Western blot / dibutyryl cAMP |
Research Abstract |
腸神経系(ENS)による薬物吸収制御に関する網羅的な検討を進める中で、本年度は、小腸における初回通過効果に影響すると考えられているP-glycoprotein (P-gp)による分泌に対するENSの影響について詳細な検討を加えた。P-gp活性については、P-gpの典型的な基質のひとつであるrhodamine123をモデル薬物として、腸管・血管同時灌流実験およびin vitro摘出小腸粘膜透過実験において、adrenalineによりアドレナリン作動性神経を充進させることでP-gp活性が低下することを明らかにした。これらはいずれも小腸刷子縁膜上に発現するP-gp量の低下を伴っていることがWestern blotにより確かめられ、このことがP-gp活性低下の一因であると考えられた。この作用に関与するreceptorのsubtypeについての情報を得るため選択的α2受容体作動薬clonidineの作用を検討したところ、腸管・血管同時灌流実験では顕著な影響が見られなかったのに対し、小腸粘膜透過実験ではclonidineによりadrenalineの作用が良好に再現された。そこで、receptorを介した影響のみを評価できるCaco-2培養細胞系により検討したところ、adrenaline、clonidineともにP-gp活性を低下させることが明らかとなった。このことから、粘膜下神経叢、および上皮細胞上のreceptorを介した作用にはα2 receptorが関与しているものと考えられた。それに対し筋層間神経叢も保持している腸管血管同時灌流実験では、おそらく、筋層聞神経叢-粘膜下神経叢間での相互作用によりα2 receptorを介した刺激が相殺されたものと推察された。一方、選択的β1受容体作動薬であるdobutamineを作用させることにより、いずれの系においてもP-gp活性が上昇する傾向が見られた。β1受容体が刺激された後には、細胞内cAMPが上昇することが知られていることから、dibutyryl cAMPの影響をCaco-2細胞系で検討したところ、顕著なP-gp活性の上昇が認められた。このことからcAMPの変動がP-gp活性の変動につながっているものと推察された。
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