2007 Fiscal Year Annual Research Report
メカニズムに基づいたPK-PD解析モデルによる医薬品の最適投与設計
Project/Area Number |
18590159
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
掛見 正郎 Osaka University of Pharmaceutical Sciences, 薬学部, 教授 (00019134)
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Keywords | 時間薬理学 / 日内変動 / 糖尿病 / 生体恒常系 / GKラット / PK-PD |
Research Abstract |
本研究は生体恒常系のフィードバック調節系に着目し、投与された薬物の生体内動態(PK)と、薬理効果(PD)との関係を、概日変動を含めた「メカニズムに基づいたPK-PD解析」を行うことで定量化し、これを使用して新しい投与計画設定法の確立を目指すものである。生体恒常系として本研究で取り上げた血糖値は、顕著な日周リズムを持つことが知られている。また、2型糖尿病(NIDDM)の治療に用いられるスルホニルウレア(SU)剤の血糖低下作用の一部は、生体の血糖恒常系を介するものであり、生体が有するインスリン分泌能や糖取り込み能の日周変動の影響を大きく受けることが予想される。これまでに私達は、正常ラットにおいてSU剤であるトルブタミド(TB)の血糖低下効果が投与時刻によって顕著に変動することを報告してきた。そこで今回、生体リズムに応じたSU剤の最適な投与計画の開発を目的に、NIDDMモデル動物である後藤・柿崎(GK)ラットを用いて同様の実験を行い、正常ラットと比較検討した。その結果、NIDDM動物においても有意な日周リズムがみられること、正常動物に比べ位相が約3時間後退していること、NIDDM動物におけるTBの血糖低下効果は弱いものの、明期(休息期)に比べて暗期(活動期)に増強する傾向がみられることが判った。このとき、投与時刻おける顕著な差はみられなかったが、正常動物と同様に明期においてわずかに消失が遅れる傾向が見られた。また、暗期において、明らかにインスリン抵抗性が低下していることが判った。このことは、インスリンの血糖低下効果が、正常動物同様に暗期に充進していることを示している。したがって、(1)TBの血糖低下効果は活動期に強く現れるが、これには薬物動態学的要因よりもむしろ薬力学的過程に起因すること、(2)生体の糖取り込みを充進させる糖尿病治療薬では、その投与計画に生体の日周リズムを考慮する必要性があることの2点を明らかにすることが出来た。このように、本年度はGKラットにおけるTBの時間薬理学的、時間薬物動態学的検討に関してほぼ目標通りの成果を得たと考えている。現在、新しい病態モデル動物を用いて検討を始めている。
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