2006 Fiscal Year Annual Research Report
虚血ストレスにおける神経細胞と心筋細胞の核内脂質代謝酵素の変化と機能的意義
Project/Area Number |
18590179
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 直樹 山形大学, 医学部, 教授 (30205405)
八月朔日 泰和 山形大学, 医学部, 助手 (00372334)
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Keywords | 虚血ストレス / 心筋細胞 / 神経細胞 / 脂質代謝 / 核 |
Research Abstract |
我々は、生体情報伝達機構における脂質性二次伝達物質ジアシルグリセロールのリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)に注目し、ラットから5種のDGKアイソザイム(α,-β,-γ,-ζ,-ι)を単離し、その分子多様性を明らかにしてきた。今年度は、虚血ストレスに対する細胞の初期応答機構について、頻度が高くかつ、重篤な障害をもたらす心筋細胞の障害に焦点を絞り、DGK(ゼータ)の分子動態を指標として解析を行った。心筋細胞はニューロンと同様、高度に分化した細胞であり生後分裂増殖しないという共通の性質を持つので、脳内のニューロンで得られた実験結果と比較検討した。 本研究の心臓を用いた実験では初めに、心臓左室前壁を栄養する冠状動脈左前下降枝を結紮し心筋虚血モデルを作製し検討した。その結果、DGKζ(ゼータ)は、正常心筋細胞においてニューロン同様、核内に局在するが、虚血領域の心筋細胞では核内から消失し細胞質に検出されることが明らかとなった。しかしながら虚血後血流を再開するとDGKζ(ゼータ)は再び核内に検出されるようになった。次に新生仔ラットから作製した初代心筋培養細胞を用いて、生体の虚血状態をシミュレートするために無酸素ガス(95%窒素/5%二酸化炭素)を用いて実験を行った。その結果、培養心筋細胞においても個体実験と同様にDGKζ(ゼータ)は、核から消失し細胞質に認められ、正常酸素下に戻すと再び核内に認められるようになった。 これらの結果は、ニューロンで認めれる不可逆性の応答と大きく異なっている。海馬ニューロンは虚血再灌流後に細胞死の運命をたどるが、一方、心筋細胞は細胞死に陥ることなく生存する。今後、DGKζ(ゼータ)の核内局在と細胞の生存の関わりについて研究を進めていく予定である。
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