2007 Fiscal Year Annual Research Report
前脳のANH分泌制御機構における興奮性・抑制性アミノ酸伝達物質の機能的連関の解明
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18590217
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山口 賢一 Niigata University, 医歯学系, 助教 (50108023)
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Keywords | 第三脳室前腹側部(AV3V) / GABA / グルタミン酸 / ADH / 血圧 / 心拍数 / 高血糖 / 血漿浸透圧 |
Research Abstract |
本研究の目的は、第三脳室腹側前部(AV3V)に分布するγアミノ酪酸(GABA)-受容体(-R)が、様々な生理的状態で、ADH分泌や心血管系などの自律機能調節に果たす役割を解明し、抑制性アミノ酸であるGABAと興奮性アミノ酸であるグルタミン酸(Glu)のAV3V作用の間には、機能的連関のあることを実証することだった。交付申請書の記載に沿って研究を行い、以下の結果を得た。(1)AV3VにGABA(A)-Rの阻害薬であるBicuculline(Bic)を局所投与すると、血圧(BP)、心拍数(HR)、血漿ADH、浸透圧(Osm)グルコース(Glc)が急激に上昇した。脳室内投与では効果が見られなかった。AV3VにGABA(B)-R阻害薬を与えた場合には、全ての因子が変動しなかった。BicのAV3V投与で生じた反応は全て、GABA(A)-Rの作用薬であるmuscimol(Mus)の前投与によって抑制された。GluのNMDA-R阻害薬であるMK-801やnon-NMDA-R阻害薬であるNBQXを前投与してもBicのAV3V投与で起こる血漿ADH、Osm、Glcの増加が妨げられたが、BP、HRは顕著に変わらなかった。高張食塩水を静脈内に持続注入すると、Osm、Na+、Cl-濃度が漸次上昇し、これと平行して血漿ADHとBPが増加した。注入前にMusをAV3V投与すると、血漿ADHとBPの増加が完全に抑制された。Osmや電解質の反応は抑えられず、むしろ増大する傾向だった。Musに代えて、GABA(B)-Rの作用薬であるBaclofen、或いはMK-801やNBQXをAV3Vに与えても、高張食塩水静脈注入によるADH反応は消失した。他方、血圧反応は減少しなかった。以上の結果は、(1)AV3VのGABA系は基礎状態で緊張的にADH分泌や心血管機能を抑えていること、(2)血漿浸透圧増加時にはその作用が弱まり、Glu系の働きが強まってADH分泌が促進すること、を示唆するものである。
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