2008 Fiscal Year Annual Research Report
前脳のADH分泌制御機構における興奮性・抑制性アミノ酸伝達物質の機能的連関の解明
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18590217
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山口 賢一 Niigata University, 医歯学系, 講師 (50108023)
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Keywords | 第三脳室前腹側部(AV3V) / GABA / グルタミン酸 / ADH / 血圧 / 心拍数 / 高血糖 / ノルアドレナリン |
Research Abstract |
今年度の研究目標は、抑制性アミノ酸伝達物質γアミノ酪酸(GABA)と興奮性アミノ酸伝達物質グルタミン酸(Glu)の、第三脳室腹側前部(AV3V;自律機能の中枢)における機能的連関を調べ、さらに心血管反応における脳内β受容体(R)の役割を追究することだった。研究は交付申請書の記載通りに行い、次の結果を得た。(1)覚醒・非拘束ラットの大腿動脈から血液を吸引除去し、非降圧性および降圧性の低容量刺激を与えた。非降圧性刺激は、血漿ADH、angiotensin II、浸透圧、g1ucoseを僅かに、降圧性刺激は著しく増大させた。脱血前にGABA(A)-作動薬muscimol(Mus)をAV3Vに注入すると、血漿ADHの増大のみが著しく抑制され、血圧やその他の因子の反応は変わらなかった。Musの脳室内注入でも、ADH反応に同様の減少傾向を認めたが、有意ではなかった。Musに代えて、G1u-R阻害薬であるMK-801やNBQXをAV3V投与しても、脱血によるADH増大反応は減衰した。MusのAV3V注入後に脱血しなかった群では、全測定因子に顕著な変化がなかった。GABA(A)-R阻害薬bicucu11ineをAV3V注入すると、血漿ADHが増大し、この反応は、MK-801やNBQXの前投与で消失した。以上の結果から、AV3VのGABA系は、基礎状態で緊張性にADH分泌を抑えているが、低容量刺激が起こるとその働きが弱まり、G1u系の活性が高まってADH分泌が高進する、と考えられる。(2)AV3Vを含む広い脳領域に、noradrena1ineβ-R作動薬を注入すると、血圧その他の因子は変わらずに、心拍数のみが上昇した。この反応は、β-R阻害薬によって抑制され、α-R阻害薬では変わらなかった。また、神経節遮断薬の静脈投与も頻脈反応を抑制した。以上の観察は、血圧反射に依らない、β受容体を介する神経性頻脈機構が脳内に広く分布することを示唆する。
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