2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18590225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
近藤 保彦 日本医科大学, 医学部, 講師 (00192584)
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Keywords | 性指向性 / 性行動 / アンドロゲン / エストロゲン / 扁桃体 / 視床下部 / 嗅覚 / ラット |
Research Abstract |
性的に成熟した雄ラットに、雄ラットおよび発情雌ラットの匂いを同時に提示すると発情雌臭に強い選好性を示す。また、正常雄ラットと去勢雄ラットの匂いでは、去勢雄ラットの匂いに対して選好性を示す。このパターンは、雌が持つ正常雄ラットに対する選好性とまったく反対であり、性指向性に依存していると考えられる。我々は、この雄ラットが示す雄型選好性パターンが、去勢によって一時的に反転することを見出した。すなわち、去勢後、雄ラットはおよそ2週間にわたって雌型の選好性パターンにシフトするのである。これは、雄ラットの脳内に雄型・雌型の両方の性指向性回路が存在していることを示している。そこで我々は、この性指向性回路、匂いの選好性回路を同定するため、雄ラットの扁桃体内側核および内側視索前野にイボテン酸を注入し、局所破壊して匂いの選好性に対する影響を調べた。扁桃体内側核の破壊は、去勢雄臭に対する選好性を消失させたが、発情雌臭に対する選好性には影響しなかった。これに対して、視索前野破壊は、去勢雄臭、発情雌臭の両方の選好性を低下させた。これらのことから、去勢雄に対する選好性と発情雌に対する選好性の制御回路は、異なる匂い処理系を介していることが示唆させる。 社会的な化学感覚信号は、1つには鋤鼻器(フェロモンシグナル系)から、1つには嗅上皮(主嗅覚系)から入力され、それぞれ副嗅球→扁桃体内側核→分界条床核・視索前野、主嗅球→梨状葉・扁桃体皮質核へと伝えられる。我々の結果では、扁桃体内側核は去勢雄に対する選好性のみに影響したことから、少なくとも発情雌の匂いに対する選好性ではフェロモンシグナル系以外の、主嗅覚系が関与していることを示している。それに対して去勢雄臭に対する選好性は、扁桃体内側核の破壊によっても傷害されたことから鋤鼻器から入力されるフェロモンシグナル系が重要な役割を果たしていると考えられる。 この後、すべての動物を去勢し、去勢後の匂い選好性についてテストを行ったが、今回の実験では、いずれの群も去勢後5週間にわたって一貫した雌に対する匂い選好性を示し、性指向性パターンの反転は観察されなかった。現在のところ、この原因は不明であるが、次年度は、この点を含め、さらに検討を重ねて生きたい。
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Research Products
(1 results)