2006 Fiscal Year Annual Research Report
動脈血管に対する甲状腺ホルモンの直接作用の同定とその生理的役割の検討
Project/Area Number |
18590252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 陽治 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子細胞医薬部第2室, 室長 (40312285)
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Keywords | 甲状腺ホルモン / 血管石灰化 / 血管平滑筋 / 細胞増殖 / 甲状腺機能低下症 |
Research Abstract |
本研究の目的は、動脈血管に対する甲状腺ホルモンの直接作用を同定し、その生理的意義を明らかにすることにある。十分な甲状腺ホルモン補充療法を受けていない甲状腺機能低下症患者では動脈血管石灰化か頻発することが知られている。これまでに我々は、血管における甲状腺ホルモンの生理的な標的遺伝子として血管石灰化抑制因子であるmatrix Gla protein(MGP)遺伝子を世界で初めて同定することに成功している。本年度はMGP以外の細胞分化・増殖関連遺伝子にも甲状腺ホルモンに応答するものが存在するという仮説を立て、これを検証した。メチマゾール投与による甲状腺機能低下症モデルラットの大動脈を摘出し、定量的RT-PCRを用いて検討したところ、transforming growthfactor-β(TGFβ)のアイソフォームのうち、TGFβ_2およびTGFβ_3のmRNA発現量が有意に低下することが発見された。この際、TGFβ_1のmRNA発現量には変化が認められなかった。この現象が血中甲状腺ホルモン濃度低下の動脈血管に対する直接的影響によるものであることを確認する目的で、培養ラット大動脈平滑筋細胞における生理的濃度のトリョードチロニン(T3)の効果を検討したところ、合成型および収縮型いずれの表現型においても、遊離濃度30pMのT3によってTGFβ_2およびTGFβ_3のmRN発現量が増加すること、およびこの際TGFβ_1のmRNA発現量には変化が認められないことが明らかとなった。TGFβ_1とTGFβ_3は血管平滑筋細胞の増殖に関してそれぞれ促進的、抑制的に作用することが知られており、上記の結果は甲状腺ホルモンが直接的に血管平滑筋細胞に作用し、その増殖に関与することを示唆するものである。
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