2007 Fiscal Year Annual Research Report
破骨細胞の分子作用機序の解明-いかにしてマクロファージは巨大化し骨を溶かすか
Project/Area Number |
18590267
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
通山 由美 Himeji Dokkyo University, 薬学部, 教授 (70362770)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 博平 神戸大学, 名誉教授 (90030882)
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Keywords | 細胞・組織 / 生体分子 / シグナル伝達 / 破骨細胞 / リソソーム |
Research Abstract |
平成18年度に引き続き、in vitroにヒト末梢血由来単球および白血病細胞株を破骨細胞に分化するシステムを利用して破骨細胞による骨溶解作用(骨吸収)の分子機構の解明をめざした。本年度は、再現性のある解析を行うため、まず骨溶解の開始因子を探索し、エネルギー分子であるATPが骨成分の分解を充進することを見いだした。そこで、ATP刺激後の細胞骨格の変化とリソソーム様穎粒の動きを経時的に追跡し、以下のような骨溶解のプロセスを見いだした。(1)破骨細胞による骨溶解は、ATPと細胞表面の受容体P2×7の結合により生じるシグナルで惹起され、その際、まず既存のアクチン細胞骨格が崩壊して、時間経過依存性にpodosomeから成る環状の接着帯を形成する。(2)アクチンの変化に呼応するように、リソソームの移動が充進し、半球状の破骨細胞の天頂部分に一旦集まり、その後環状の接着帯の内側領域にむけて移動して放出される。(3)上記の変化には微小管の構成成分であるαチューブリンのアセチル化の充進とその後の脱アセチル化が必須であり、脱アセチル化阻害剤により、環状接着帯の形成、とリソソームの輸送が阻止される。(4)これら微小管のαチューリンのアセチル化と脱アセチル化の上流でチロシンキナーゼSykが機能している。 破骨細胞による骨溶解作用機構は、in vitro実験の難しさや開始因子が見いだされていなかったために、詳細な解析が十分おこなわれていなかった。今回私達は、ヒト末梢血由来単球からの分化モデルを確立し、かつ開始因子の候補であるATPを利用する事により、再現性のある骨溶解実験を行って分子機序を解析することができた。本結果は、破骨細胞の過剰な活性化や機能不全によりおこる病態や疾患の分子基盤の確立および新規治療法の開発への貢献が期待される。
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