Research Abstract |
ヘムの分解は,ヘムオキシゲナーゼ(HO),NADPH-シトクロムP450還元酵素(CPR),ビリベルジン還元酵素(BVR)の3つの酵素によって達成される。これら3つの酵素の立体構造は既に決定されているが,その3者がいかに会合,解離するかというタンパク質間相互作用の詳細を検討するために,HOと2つの還元酵素との柑互作用を質量分析法によって検討した。HO単独でアセチル化すると,HO活性の著しい低下が観測された。一方,CPR存在下でアセチル化したHOは,その活性を維持していた。MALDI-TOF MSによって,アセチル化部位の同定を試みたところ,HO単独でアセチル化した場合,HOの14個のリジン残基中,11個がアセチル化されることがわかった。CPR存在下でHOをアセチル化した場合,Lys-149とLys-153がアセチル化を受けず,保護されていることがわかった。このことから,この2つのリジン残基がCPRとの相互作用に重要であることが示唆された。 一方,最近ガン,循環器障害,マラリア等の病態においてヘム代謝の関与が示唆され,HO阻害剤は薬剤としての有用性が期待される。イミダゾールージオキソレン化合物が,特異的にHOを阻害する事が報告されたが,このもののHOに対する結合および阻害様式は不明であった。ヘム-HO-1複合体にイミダゾールージオキソレン化合物を結合させ,その構造を2.7Å分解能で決定した結果,阻害剤のイミダゾール基がヘム鉄に配位し,酸素のヘム鉄への結合を阻害する事によって,HO反応を阻害している事が知られた。
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