2006 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド前駆体蛋白質に由来するAICDによるp53を介した神経細胞死誘導機構
Project/Area Number |
18590279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
尾崎 俊文 千葉県がんセンター(研究所), 生化学研究部, 上席研究員 (40260252)
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Keywords | p53 / AICD / APP / apoptosis / アルツハイマー |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)は、痴呆を特徴とする進行性の神経変性疾患であり、神経細胞の脱落、老人斑、および神経原繊維変化の蓄積を伴う。セクレターゼによるアミロイド前駆体蛋白質(APP)の連続的な切断によって生成されるアミロイドβ蛋白(Aβ)は、凝集性および神経毒性を持つとともに老人斑の主要な成分であることから、Aβの蓄積による老人斑の形成がアルツハイマー病の主たる原因の一つであると考えられている。一方、最近になってセクレターゼによるAPPの切断によってAβとともに生成されるAPPのカルボキシル末端側断片(AICD)が、細胞核内に移行し転写複合体を形成することによって、標的遺伝子群の発現調節を介して神経細胞死を誘導する機能を持つ可能性が指摘されている。従って、AICDによる神経細胞死の誘導という現象は、アルツハイマー病の原因の解明に向けての新たな研究の方向性を示しているが、AICDを介した神経細胞死の詳細な分子機構については不明である。本研究で、我々はがん抑制蛋白質であるp53が特異的なDNA結合活性を持つ転写制御因子であり、さらに神経細胞死を誘導する機能を持つことから、AICDによる神経細胞死におけるp53の役割の有無に着目した研究を行った。その結果、我々はシスプラチンによる神経芽腫細胞の細胞死誘導過程において、APPのカルボキシ末端を認識する抗体を用いた免疫沈降実験から、APPがp53と共沈することを見い出した。また、一過性の過剰発現系を用いたレポーターアッセイから、AICDがp53と結合しその転写因子としての活性を増強することが明らかになった。さらに、AICDによる細胞死の誘導は内在性のp53を欠くH1299細胞では認められず、野生型p53を持つU20S細胞では検出された。従って、今回の実験結果はAICDがco-factorとしてp53の活性を正に制御することによって、神経細胞死を誘導する可能性を強く示唆する。本研究成果は、国際的な速報誌に受理された(Ozaki et al., Biochem Biophys Res Commun., 351:57-63, 2006)。
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