2006 Fiscal Year Annual Research Report
Ras発癌過程を媒介する活性酸素産生遺伝子Nox1の情報伝達経路の解析
Project/Area Number |
18590289
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鎌田 徹 信州大学, 医学部, 教授 (40056304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 喜文 信州大学, 医学部, 助教授 (50201893)
加藤 真良 信州大学, 医学部, 助手 (70402104)
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Keywords | Nox1 / Ras / 活性酸素 / レドックスシグナリング / アポプトシス / 接着 / ERp72 / 細胞形質 |
Research Abstract |
本研究のねらいは、ヒト多段階発癌に寄与する活性酸素(ROS)産生遺伝子Noxファミリーの機能的役割をRas発癌モデルを用いて解明し、癌の予防・診断・治療の基礎を築くことにある。申請者は既に、Ras-Raf-MAPKK-MAPK経路に介して誘導されるNox1がRasの癌化形質に必要であることを発見した。また、高頻度で、K-Ras活性型変異が認められるヒト大腸癌で、Nox1の高発現を検出した。我々は、この知見に基づき、Nox1の産生するROSが情報伝達分子として癌化形質維持に、必要であるという新機構を提唱した。本研究では、1)Nox1によって産生されるROSの標的候補の機能的解析2)Ras癌細胞の形態、接着調節におけるNox1の役割の解析を行った。 項目1:thioredoxin homologyドメインをもつERp72が、Nox1の標的となり、酸化されることを見出した。これが、ERp72によるAKT抑制を解除して、EGFによって誘導される細胞生存(抗アポプトシス)へ寄与することを解明した(投稿中)。Nox1がERp72と細胞膜に共局在し、相互作用すること、及びERp72がAKTと結合して細胞の生存シグナル調節を行うことが初めて解明された。 項目2:Ras癌細胞では、Nox1がLMW-PTPを酸化・不活化してRhoの活性を抑制することが判った。さらに、ROCK-LCK-cofilinの情報伝達が阻害され、アクチン線維束の形成や接着能が阻害され、癌細胞特有の浸潤能を獲得することを解明した(J.Biol.Chem. in press)。 以上の結果により、Nox1レドックスシグナリングが癌細胞の生存、形態変化、浸潤に需要な律速因子としてかかわるという新しい癌化機構が提示された。
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