2007 Fiscal Year Annual Research Report
Ras発癌過程を媒介する活性酸素産生遺伝子Nox1の情報伝達経路の解析
Project/Area Number |
18590289
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鎌田 徹 Shinshu University, 医学部, 教授 (40056304)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 喜文 信州大学, 医学部, 准教授 (50201893)
加藤 真良 信州大学, 医学部, 助教 (70402104)
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Keywords | Nox1 / Ras / 活性酸素 / Rho / LMW-PTP / ERp72 / 接着・浸潤 / 発癌 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ヒト発癌のモデルとしてのRas癌細胞において、活性酸素(ROS)産生遺伝子Nox1の情報伝達機構を解明し、癌予防・診断・治療の基礎を築くことにある。申請者は、既に、Nox1がRas発癌過程を媒介するという証拠を蓄積してきた。また、ヒト大腸癌、膵癌、メラノーマにNoxファミリーが密接に関与することも確認してきた。我々は、この知見に基づき、Nox1の産生するROSが情報伝達分子として、癌形質の必須的成分を担っているという発癌の新機構を提唱してきた。 本研究では、1)Nox1によって産生されるROSの標的の同定、2)Ras癌細胞のRhoを介した浸潤・接着におけるNox1の役割の解析を行い、Nox1の情報伝達経路を検討した。その結果、次の進展がみられた。 研究項目1:Nox1が細胞膜上で小胞体蛋白ERp72に結合し、ERp72のレドックス活性を制御することを明らかにした。また、Nox1-ERp72複合体が、EGF受容体シグナルを媒介することが判明した。 研究項目2:Ras癌細胞においてNox1が、プロテンタイロシンホスファターゼLMW-PTPを直接、酸化・不活化し、RhoGAPのタイロシンリン酸化を亢進する。その結果、GAP活性が高まり、不活化型RhoGDPが蓄積し、ROCKを介してアクチン繊維束形成の低下と、接着能の減弱を引き起こすことが明らかになった。 以上の結果から、Nox1が多面的な細胞内情報伝達にかかわることが考えられる。また、Nox1が癌細胞の形態変化や接着を制御することが証明され、癌化におけるNox1の原初的な重要性がさらに高まった。今後、EGFの如何なる生理作用にNox1-ERp72が共役するのか、また他の癌特性-腫瘍血管形成や浸潤にかかわるVEGFやMMP-9発現の制御におけるNox1の情報伝達機構を解明したい。
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