2006 Fiscal Year Annual Research Report
がん抑制遺伝子TSLC1はATLではがん遺伝子として働く
Project/Area Number |
18590302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
森下 和広 宮崎大学, 医学部, 教授 (80260321)
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Keywords | TSLC1 / IGSF4 / 成人T細胞白血病 / がん抑制遺伝子 / 接着因子 |
Research Abstract |
TSLC1は、成人T細胞白血病(ATL)において高発現がみられる遺伝子の一つとしてDNAマイクロアレイ解析により同定した。TSLC1は肺癌においてはがん抑制遺伝子として知られる上皮系細胞における細胞接着因子である。ATL細胞におけるTSLC1高発現は、自己細胞接着能、血管内皮細胞接着能を亢進させた。マウスTリンパ腫EL細胞を用いてTSLC1高発現細胞株を作製し、C57BLマウス腹腔に導入したところ、コントロールEL細胞が平均6ヶ月で死亡するのに対して3ヶ月で死亡し、肝臓等への浸潤能が亢進していた。従ってTSLC1高発現はがんの悪性度を増強させている事を示唆する。さらに、免疫不全NOGマウスを用いて、TSLC1高発現ATL細胞株EDを静注し、一ヶ月後に解剖したところ、TSLC1低発現EDコントロール細胞では臓器浸潤が見られなかったが、TSLC1高発現細胞株では、肝臓浸潤が全匹に見られ肝臓指向性が強い事が明らかとなった。さらにCD4-TSLC1トランスジェニックマウスを作製した。一年半くらい経過した後、皮膚症状が現れ脱毛、炎症反応が強く現れた。その中の数匹は腹水貯留が著名であり、解剖により、腹腔内リンパ腫であった。表面抗原の検討からTリンパ腫であり、CD4陽性CD8陰性のhelper T cellで、TSLC1陽性であった。従って一部にTリンパ腫を発症する事がわかった。これらの結果から、TSLC1はT細胞リンパ腫・白血病において悪化因子の一つであり、臓器浸潤性に関わる遺伝子であると考えられる。トランスジェニックマウスの検討からTSLC1高発現Tリンパ球がリンパ腫になる下地を作っている事が考えられ、さらにその機構について検討中である。また、TSLC1抗体を多種作製し、ATL細胞に対するFACS解析が可能になり、可溶型TSLC1タンパク質を患者血清中に同定できた。従ってATLの早期診断や病勢診断などに有用と考えられ、機能解析と同時に診断治療法開発への応用も計っている。
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Research Products
(1 results)