Research Abstract |
分子生物学的研究からテトラスパニンには,細胞移動,細胞間ネットワークの形成や,細胞-基質接着制御機能があると考えられているが,腫瘍におけるテトラスパニンの役割には不明の点が多い.本研究では,皮膚由来癌細胞をモデルとし,浸潤局所でのCD151の動態を詳細に解析した. 免疫染色では細胞の悪性度と正の相関を示すといわれてきたCD151の染色性が微小浸潤部および浸潤癌においてα3の発現消失と一致して減弱したことから,CD151の細胞内局在が浸潤部においてダイナミックに変化していると予想した.そのためFACSによる皮膚癌細胞表面膜蛋白の発現を検討した.皮膚癌HSC5におけるテトラスパニンの細胞膜における発現は,CD9が最も高く,CD151はclone 11G5aに高度の,clone 14A2に中等度の発現を認めた.一方不死化皮膚細胞HaCaTではCD9,CD151ともに発現はHSC5の約半分で,clone 14A2は殆ど陰性に近い結果であった.α3,α6,β1,β4インテグリンはいずれもHSC5でHaCaTに比較して高度に発現していた.HaCaTではα6の発現は殆ど陰性であった.この結果から,浸潤能を獲得した皮膚癌細胞はCD151の発現がclone 11G5a, clone 14A2いずれにおいても細胞レベルでは増加していると考えられた. CD151ノックダウンがインテグリンの細胞膜発現強度を変化させるかどうか,FACSにて検討した.HSC5^<CD151->ではα3,α6に明らかな膜発現減弱がみられた.β1,β4も減弱したが,ノックダウン細胞においても十分な発現度は維持された).ノックダウンによるインテグリン局在変化を細胞染色にて検討した.Control-HSC5では,α3,β1インテグリンは細胞-細胞間に,α6,β4は細胞-基質間に集積が見られた.一方HSC5^<CD151->では,α3,β1が細胞-細胞間から内在する傾向が認められた.α6,β4では細胞辺縁部に凝集する像がみられた. 本研究によって,EGF刺激でCD9は移動せず,CD151が内在化することが示された.テトラスパニンの中でもCD151とCD9の役割が大きく異なると推察される.今回の結果からCD151がEGFRなどのチロシン受容体を介したシグナルに介在していることが示唆される.
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