2007 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモン不応性前立腺癌の遺伝子発現プロファイルとその発生機序
Project/Area Number |
18590323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 英刀 The University of Tokyo, 医科学研究所, 准教授 (50361621)
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Keywords | 前立腺癌 / マイクロアレイ / ホルモン療法不応性 / 分子標的 / 5αステロイド還元酵素 |
Research Abstract |
前立腺癌の臨床において最も問題となるのは、ホルモン不応性前立腺癌の出現である。内科的、外科的去勢といったホルモン療法によって前立腺癌の増殖は抑制されるが、ある段階でホルモン療法に対して耐性となり、悪性度が増して、最終的に患者を死に至らしめる。このホルモン不応性前立腺癌の分子的特徴を解明するため、18症例のホルモン不応性前立腺癌を収集し、これら凍結切片より癌細胞のみを抽出し、ゲノムワイド(3万スポット以上)でのcDNAマイクロアレルにより、遺伝子発現解析をおこなった。そして、今回作成した遺伝子プロファイルを基にして、前立腺癌の新規標的分子の同定を行った。RT-PCRにてその発現パターンが確認できた数十個の遺伝子のうち、SRD5A2L遺伝子に注目した。前立腺癌を含むアンドロゲンの標的組織においては、テストステロン(T)は、最もアンドロゲンとしての作用が強いDHTに変換され、アンドロゲン受容体と結合する。TをDHTに変換する酵素としてこれまで2つの5αステロイド還元酵素(type-1,-2)が報告されているが、SRD5A2L遺伝子を、新規のtype-3 5αステロイド還元酵素(SRD5A3)と命名した(NM_024592)。SRD5A3の発現はtype-1と同様に、前立腺の癌化、さらにはホルモン療法不応性になるにしたがって上昇し、また正常前立腺で最も発現しているtype-2はその発現が減弱した。SRD5A3を強制発現させた細胞を酵素源として、in vitroでのTからDHTへの変換を行い、LC-MS/MSにてDHTの生成量を測定した。その結果、陽性コントロールのtype-1と同様に、type-3においてもDHTの生成能力が確認され、SRD5A3は5αステロイド還元酵素としての活性を有することが証明された。さらには、前立腺癌細胞株において、SRD5A3の発現をsiRNAにて抑制すると、細胞および培養液中のDHT/T比が減少し、それに伴い前立腺癌細胞株の増殖が減少した。以上より、SRD5A3は前立腺癌の増殖にとって重要な因子であることが明らかになり、前立腺癌の治療の新規分子標的となると考えられる。
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Research Products
(6 results)