2006 Fiscal Year Annual Research Report
食道同時性・異時性多発癌の病理学的、分子病理学的解析
Project/Area Number |
18590352
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okinaka Memorial Institute for Medical Research |
Principal Investigator |
大橋 健一 (財)冲中記念成人病研究所, 研究員 (40231203)
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Keywords | 食道癌 / 舌癌 / 咽頭癌 / 喉頭癌 / 多発癌 / 早期癌 |
Research Abstract |
食道原発の扁平上皮癌は日本、中国など東アジアに多く発生し、予後の悪く、頭頚部の臓器に同時性、異時性に多発することが知られている。食道癌の病因としては、ウイルス感染症、アルコール多飲、喫煙などの生活習慣との関連が指摘されているが、いまだ多発発生の詳しいメカニズムは明らかではない。平成18年度はAldose-keto-reductase family protein1B(AKR1B)の発現について検討した。AKR1Bは様々な炭素化合物の還元反応に関与するが、消化管における解毒作用、副腎におけるステロイド代謝が知られている。癌との関係ではレチノイン酸の産生抑制、アポトーシスにも関与していることが報告されている。喫煙歴のある肺原発扁平上皮癌においてAKR1Bが高率に発現されることがわれわれの研究室との共同研究から明らかになった。食道癌、舌癌、咽頭・喉頭癌および背景粘膜、前癌病変におけるAKR1Bの発現をモノタローナル抗体を作製して免疫組織学的に検討した。食道癌症例は65%に陽性所見を認め、早期の癌、上皮内癌においても効率に陽性所見を認めた。前癌病変であるdysplasia例では25%の症例に陽性所見を認めた。食道炎など良性病変にはほとんど陽性例を認めなかった。舌癌では86%の症例に陽性所見を認めたが、喫煙歴、飲酒歴との明らかな相関は認めなかった。咽頭癌では60%、喉頭癌では89%の症例に陽性所見を認めた。AKR1Bは頭頚部癌を早期の段階から認識するすくれたBiomarkerであるが、おそらくは早期の癌においても発癌物質などに対する解毒機能が亢進している可能性が考えられる。19年度では食道多発癌のさらなる分子病理学的性状について検討を進めたい。
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