2008 Fiscal Year Annual Research Report
がん-間質相互作用における新規誘導分子の同定・探索
Project/Area Number |
18590356
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
藤井 元 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, 病理部, 主任研究官 (90321877)
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Keywords | がん間質相互作用 / 発現誘導 / 浸潤先進部 / スクリーニング / ラミニン5 / 遺伝子導入 / cDNAライブラリー |
Research Abstract |
当研究はがん間質相互作用に基づいて浸潤先進部のがん細胞で特異的に発現の増強もしくは減弱の見られる分子の発現を誘導しうる間質細胞を選び出し、そこで発現している遺伝子のcDNAライブラリーを作製して培養細胞へ導入しての発現アッセイを行う事で、発現誘導に関する〈上流〉分子を同定する事を計画していた。前年度までの研究で口腔がん細胞HO1-U1において浸潤先進部マーカー分子であるラミニン5g2分子の発現上昇を誘起しうるいくつかの候補遺伝子を得たものの、どの遺伝子も間質細胞として利用した線維芽細胞の作用を代替できる程の強い誘導活性は得られなかったので、今回取得できた遺伝子以外に誘導分子の本体があるか、複数因子/条件の協働作用によって発現誘導が起こっているものと推定された。 そこで20年度は以下の二つの観点から細胞生物学的な検定実験を中心に施行した: 1)腫瘍細胞内の間質誘導シグナルの伝達利用したHO1-u1細胞におけるラミニン分子の発現上昇はEGF/TGFaによって人為的に誘起できる事が判明していたので、MAP-Kinase経路が発現上昇に関与しているかの検定を阻害剤を利用して行った。その結果、MAP-Kinase経路はラミニン分子の発現誘導に大きく関与しているものの、全てを担う十分条件でなく、他の誘導因子/条件の存在必要性が強く示唆された。 2)低分子薬剤による線維芽細胞の活性化ラミニン分子の発現を精査する過程の中で乳酸などの無酸素呼吸関連分子(解糖系関連分子)が発現上昇に線維芽細胞共培養特異的に関連していることを見いだした。さらにこの発現上昇はpHといった物理科学的な変動ではなく、解糖系代謝産物により誘起されている事を確認し、無酸素呼吸ががん間質相互作用が通じてがんの悪性度増悪に寄与している可能性を確認できた。
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