2007 Fiscal Year Annual Research Report
血液中に存在するS19リボソーム蛋白の血栓除去における役割
Project/Area Number |
18590374
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山本 哲郎 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (60112405)
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Keywords | S19リボソーム蛋白質 / 血液凝固XIII因子 / 単球 / マクロファージ / 白血球走化因子 / 血栓 / 血液凝固 / 細胞性線溶 / モルモット |
Research Abstract |
モルモット心臓血をガラス小管内で凝固させ、それを腹腔内へ挿入したのち日を追って回収し、残存重量の秤量による吸収状況の評価や、組織切片の光学顕微鏡観察および表層の走査型電子顕微鏡観察による単球/マクロファージの関与に関する検討を行った。さらに、この単球/マクロファージによる凝血塊吸収におけるS19リボソームタンパク質二量体の役割を見るために、ウサギに作成した抗S19リボソームタンパク質抗体の影響も観察した。 腹腔内挿入1日後には凝血塊の表面は単球/マクロファージで覆われ、3日目までに残存重量は急激に減少し、7日目にはほとんどの例で凝血塊が消失していた。表層を覆う単球/マクロファージは隣接の細胞と密着した構造を取っており、凝血塊内部の単球/マクロファージとは、抗マクロファージ抗体(抗マクロシアリン抗体)の結合性およびエステラーゼ染色性において明らかな違いが見られた。あらかじめ抗S19リボソームタンパク質抗体を混じた凝血塊の場合には、このすべての現象が有意に遅延した。また、表層における単球/マクロファージ間の結合も見られなかった。一方、in vitro で凝血塊を遠心して血清を回収すると、その中に抗S19リボソームタンパク質抗体で吸収される単球特異的な走化因子が認められ、同タンパク質の架橋化二量体と同定された。 以上の結果から、血液凝固の過程でS19リボソームタンパク質が活性型血液凝固XIII因子により二量体化されて単球走化活性を獲得し、単球/マクロファージを動員して表層を被覆すると共に、細胞性線溶機能により凝血塊を分解し、貪食処理していくものと考えられた。なお、初期の計画では免疫酵素化学法(ELISA)を用いたS19リボソームタンパク質の測定法を確立してその血漿中の濃度を定量する予定だったが、当該タンパク質の極端な塩基性荷電のために、ELISA法を確立することはできなかった。
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