2007 Fiscal Year Annual Research Report
GFR遺伝子導入胃癌・大腸がん細胞株を用いたリンパ節転移機構の解析
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18590394
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
中西 速夫 Aichi Cancer Center Research Institute, 腫瘍病理学部, 室長 (20207830)
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Keywords | リンパ節転移 / 胃癌 / 大腸がん / リンパ管新生 / リンパ管内皮細 / VEGF-C / Podoplanin |
Research Abstract |
胃がん、大腸がんの予後を規定する最も重要な因子であるリンパ節転移の機構を解明するため、今年度も引き続き腫瘍リンパ管新生について検討し、以下の諸点を明らかにした。1)胃癌・大腸癌における腫瘍リンパ管新生のin vivoにおける実態を明らかにするためにリンパ管内皮特異抗体D2-40(podoplanin)を用いて胃癌50例、大腸癌61例のリンパ管新生の免疫組織学的検討をおこなった。その結果、いずれの腫瘍においてもリンパ管新生は腫瘍周囲で起こり、血管新生のように腫瘍組織内では起こらず、むしろ正常組織に比べ減少していることを明らかにした。これに一致してVEGF-Cの発現は周囲正常上皮に比べ腫瘍細胞でむしろ減少傾向が認められた。また大腸がん細胞のリンパ管侵襲は腫瘍先進部の芽出(budding)部位の新生小リンパ管で起きていることを示唆する組織学的所見を認めたが、胃癌ではそのような所見は少なく、胃癌と大腸がんでリンパ管侵襲の機構が異なる可能性が示唆された。2)次にこれら臨床例の腫瘍リンパ管新生に関する観察結果を実験的に検証するためにDsRed遺伝子を導入した胃癌(GCIY)・大腸癌リンパ節転移細胞株(COLM-5)とFITC-Dextranを用いたmicrolymphangiographyを組み合わせて腫瘍リンパ管新生をヌードマウス皮下移植系で実験的に解析した。その結果、腫瘍リンパ管新生は腫瘍組織内ではなくむしろ腫瘍周囲の既存のリンパ管で起こり、腫瘍細胞のリンパ管侵襲も腫瘍辺縁部で起きる可能性を示唆する所見を得た。3)VEGF-Cのリンパ節転移における役割を明らかにするため、リンパ節転移能を有さず、VEGF-C低発現ヒト大腸癌細胞株にVEGF-Cを強制発現させ安定発現株を分離した。同細胞はVEGF-C発現増強を認めたものの、リンパ節転移の顕著な促進は見られなかったことから、リンパ節転移能の獲得にはリンパ管新生のみならず、腫瘍のリンパ管侵襲能が関与している可能性が示唆された。現在、VEGF-Cの役割をさらに解析するため、VEGFCのsiRNA plasmidベクター(SuperArray)の安定発現株の分離をこころみている。
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