2008 Fiscal Year Annual Research Report
GFP遺伝子導入胃癌・大腸癌細胞株を用いたリンパ節転移機構の解析
Project/Area Number |
18590394
|
Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
中西 速夫 Aichi Cancer Center Research Institute, 腫瘍病理学部, 室長 (20207830)
|
Keywords | リンパ節転移 / 胃癌 / 大腸癌 / リンパ管新生 / リンパ管内皮細胞 / VEGF-C / Podoplanin |
Research Abstract |
胃がん、大腸がんの予後を規定する最も重要な因子であるリンパ節転移の機構を解明するため、今年度も引き続き腫瘍リンパ管新生について検討し、以下の諸点を明らかした。1)胃癌・大腸癌における腫瘍リンパ管新生のin vivoにおける実態を明らかにするために今年度は対照として50例の口腔扁平上皮癌におけるリンパ管新生(リンパ管密度)をD2-40(podoplanin)抗体を用いて免疫組織学的に検討した。リンパ管密度は腫瘍組織内ではむしろ正常組織に比べ減少していること、これと一致してVEGF-Cの発現は腫瘍細胞で減少傾向が認められた。一方、血管新生は腫瘍内部で起こり、VEGFの発現は腫瘍細胞で亢進していた。以上のことからリンパ管新生は口腔がんを含めて、胃癌、大腸癌とも共通しており、主として、VEGF-Cが既存のリンパ管に作用して新生に関与す可能性が示唆された。2)次にこれら臨床例の腫瘍リンパ管新生に関する観察結果を実験的に検証するためにGFP(DsRed)遺伝子を導入した胃癌(GCIY)・大腸癌リンパ節転移細胞株(COLM-5)とFITC-Dextranを用いたmicrolymphangiographyを組み合わせてリンパ行性転移におけるがん細胞のリンパ管内動態とリンパ管新生の関連を検討した。上記細胞をソケイ部皮下に接種するとソケイリンパ節にまず転移するが、そこで発育したがん細胞は腋下リンパ節に2次的に転移する。このとき腹壁静脈に伴走する集合リンパ管中をがん細胞がリンパの流れに乗って移動するのがライブで観察可能である。この動態モデルを用いた観察から、2次リンパ節辺縁洞に定着したがん細胞が増殖し1mmほどに発育すると輸入リンパ管の流速は急速は急速に低下し、がん細胞はリンパ管内で定着、増殖するのが観察された。それに伴いリンパ管は著しく拡張する。またこのとき転移リンパ節を迂回するバイパスが容易に形成されるのが観察された。以上の観察結果は腫瘍細胞由来の可溶性因子が管内性にリンパ管内皮細胞に作用し、腫瘍リンパ管新生を引き起こす可能性を示唆している。現在、この担癌リンパ管の拉張やバイパス形成がVEGF-C抗体で阻害されるか否かを検討中である。3)VEGF-Cのリンパ節転移における役割を明らかにするため、リンパ節転特能を有し、VEGF-Cを高発現するヒト大腸癌細胞株にVEGFCのsiRNA plasmidベクター(SuperArray)を発現させ、その安定発現株を数株分離した。予備的検討ながら、VEGF-C発現はウエスタンブロットで確かに有意に抑制されたが、リンパ管密度ならびにリンパ節転移能の有意な抑制は認められず、引き続き別の多数のクローンを選別中である。
|