Research Abstract |
昨年度までの,特にサプレッサーマクロファージ(S-MΦ)から標的T細胞への細胞間接着を介する抑制性シグナル伝達メカニズムに関する検討により,T細胞内のアルドース還元酵素(aldose reductase ; AR)が重要な役割を果たしていることを強く示唆する成績が得られたことから,今年度は,ARの性状についての検討を中心に研究を進め,以下のような成績を得た.(1)これまでにARのチロシン(Tyr)リン酸化を示す報告がないことから,まず昆虫細胞系で発現させた組換え型AR蛋白(rAR)を供試し,rARに抗リン酸化Tyr抗体が結合することをウェスタンブロッティングにより確かめた.さらにマウスT細胞のライゼートを2次元電気泳動分離し,ウェスタンブロッティングを行った場合にも,抗AR抗体で検出されたスポットが,抗リン酸化チロシン抗体によっても検出されたことから,T細胞中のARがTyrリン酸化されることが分かった.(2)抗リン酸化セリン(Ser)抗体による検討から,AR内のSer残基もリン酸化されることが分かった.(3)マウスT細胞をCon Aあるいは抗CD3/抗CD28抗体で刺激した場合の,AR蛋白の発現プロフィールについて調べたところ,いずれの条件でも,刺激前と比べて培養期間中のARの発現量に大きな変動は認められないという成績が得られた.(4)chromone (AR阻害剤)の添加により,抗CD3/抗CD28抗体刺激誘導T細胞マイトジェネシスは約50%阻害されたのに対し,Con A誘導T細胞マイトジェネシスはほとんど影響を受けなかった.従ってARはTCR/CD28を介する活性化シグナル伝達に関与しているように思われる.現在,MAC-MΦからの抑制性シグナルが,標的T細胞中のどのような分子を介してARのリン酸化に影響を及ぼしているのかについて,免疫沈降法による検討を進めている.
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