2006 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドロ-ムに関連する末梢神経障害の分子機構と病態学的研究
Project/Area Number |
18590520
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉本 一博 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (70271799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄司 優 弘前大学, 医学部, 助教授 (10226300)
保嶋 実 弘前大学, 医学部, 教授 (90142934)
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Keywords | 代謝異常 / 神経障害 / 糖尿病 / インスリン抵抗性 / インスリンシグナル / メタボリックシンドローム |
Research Abstract |
近年,糖尿病患者のみならず,糖尿病予備軍である耐糖能障害(IGT)患者においても,小径線維有意の感覚神経障害が高頻度に合併していることが報告されている。また,この神経障害を有するIGT患者の大半は,高血圧,脂質代謝異常や耐糖能障害と言った肥満に関連したインスリン抵抗性による代謝徴候,すなわちメタボリックシンドローム(MS)を呈することも指摘されている。しかしながら,MSの各構成因子が,どのように神経障害の発症に寄与しているのかはほとんど検索されていない。 我々の2型糖尿病患者280例(男性163例/女性117例,平均年齢55.4±9.7歳,糖尿病歴10.7±6.7年,Alc値9.2±2.0%,body mass index(BMI)25.2±4.5kg/m^2)を対象とした検索では,年齢および糖尿病罹病期間調節後の多変量ロジスティック回帰分析において,末梢神経障害合併の臨床徴候の一つである両側アキレス腱反射の減弱あるいは消失と腹囲およびBMIの上昇との間に有意な関連性を認めた。また,心自律神経障害の指標である心拍変動係数の低下(2.5%未満)と収縮期血圧および血清遊離脂肪酸の上昇との間にも関連性が認められた。これらの結果より,我々は2型糖尿病患者においては,肥満,高血圧,脂質代謝の異常が神経障害の危険因子となり得ることを報告している(第21回日本糖尿病合併症学会)。 2型糖尿病ZDFラットモデルを用いた検索では,PPARγアゴニストであるチアゾリジン誘導体ピオグリタゾン(5mg/kg/日)を14週齢から8週間経口投与することで,このモデルに出現する温痛覚鈍麻を有意に改善させることができた。一方,降圧効果と共にインスリン抵抗性改善効果を有するアンギオテンシンII受容体拮抗剤オルメサルタン(6mg/kg/日)を同様に投与した結果では,温痛覚鈍麻に対する明らかな改善効果は認められなかったが,このモデルの感覚神経伝導速度の低下を有意に改善させることができた。 以上,今回の研究から我々は,インスリン抵抗性に関わるPPARγやアンギオテンシンIIのシグナル異常を改善することで,それぞれ2型糖尿病ラットに出現する異なる感覚神経機能異常を改善させ得ることを初めて見出した。
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Research Products
(2 results)