2006 Fiscal Year Annual Research Report
ハプロタイプ解析を用いた日本におけるサイログロブリン遺伝子異常の由来について
Project/Area Number |
18590537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
菱沼 昭 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (40201727)
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Keywords | サイログロブリン / ハプロタイプ解析 / 遺伝子異常症 / 甲状腺腫 / 創始者効果 / SNPs |
Research Abstract |
日本で発見されたサイログロブリン遺伝子異常症は42家系、53症例である。この数は、諸外国で報告された8家系、14症例と比べて圧倒的に多い。変異の種類は27で、スプライス変異が5種類、ノンセンス変異が3種類、単塩基欠失が1種類であり、ミスセンス変異が18種類と最も多い。このうち、Cys1058Argホモ接合体は5家系8症例、Cys1445Argホモ接合体は11家系12症例と両変異はホットスポットである。いずれの変異もシステインが他のアミノ酸に置換しており、システインが-S-S-結合を考慮に入れると、-S-S-結合が形成されないため、サイログロブリン蛋白の三次元構造に変化が起こったことが病因と考えられる。Cys1445Argは日本全国に認められるが、Cys1058Argは西日本の一部落にのみ認められる。その地域は甲状腺腫の多発地域として、以前より知られており、1964年の資料によると、全部落民379人中55人、14.5%に甲状腺腫が認められたとしている。サイログロブリン遺伝子異常症の一般の発症頻度は熊本県での研究により67,000人に1人であるので、14.5%という頻度は異常に高い。この部落は三方を山に、一方を海に囲まれているため、他地域との交流がなかったと考えられる。そこで、地域集積性が創始者効果によるものか調べるため、サイログロブリン遺伝子内の11ヶ所のSNPsを検討した。驚くべきことに、患者8人のハプロタイプは完全に一致していた。このハプロタイプの組み合わせは日本人一般人口では100万人に1人の確率で出現するので、Cys1058Argは独立して新しい変異が形成されたというよりは、共通の祖先から受け継いだと考えられる。それに反し、Cys1445Arg患者のハプロタイプは患者間で異なっていたため、Cys1445Arg変異は個々の症例で独立して生じたと思われる。
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Research Products
(6 results)