Research Abstract |
舌擦過によるサンプル採取方法を用いて、健常者と味覚障害例の舌における味覚関連遺伝子であるT2Rファミリーの遺伝子発現頻度について検討をおこなった。 対象は、健常者は54例、年齢は20〜73歳、平均年齢は34歳であった。味覚障害例は、日本大学医学部附属板橋病院耳鼻咽喉科の味覚外来を受診した51例、年齢は25〜88歳、平均年齢は61歳であった。味覚障害の原因の内訳は、特発性が18例、亜鉛欠乏性が17例、薬剤性が9例、感冒性が7例であり、治療は、プロマック[○!R]150mg/日の経口投与をおこなった。 今回の検討では、苦味受容体に関連するとされている、T2R3,8,9,10,13,16、THTR4,5,9,11の10遺伝子について発現頻度を検討した。 健常者に比較して味覚障害例での味覚関連遺伝子の発現頻度が低い傾向がみられ、特にT2R3,8,9,10,THTR4,5は統計学的に有意に発現頻度が低い結果であった。原因別に比較した結果、亜鉛欠乏性味覚障害で低い傾向を示し、特にT2R3,8,9,10,THTR5は統計学的に有意に発現頻度が低い結果であった。苦味障害の有無で比較した結果、苦味障害を有する群において味覚関連遺伝子の発現頻度が低い傾向を示し、特にT2R3,8,9,THTR4,5は統計学的に有意に発現頻度が低い結果であった。治療経過により、発現頻度を検討した結果、味覚障害改善群に比較して、味覚障害非改善群において統計学的に有意に味覚遺伝子発現頻度が高い結果であった。 以上の結果から、T2Rファミリーの中でも、T2R3,8,9,10,THTR4,5が特にヒトの味覚に関連している可能性が高いことが示唆され、味覚障害の診断や予後診断に応用できる可能性があるものと考えられた。
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