2006 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノ粒子のエピジェネティックな遺伝的影響と機能
Project/Area Number |
18590583
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
丹羽 保晴 国立循環器病センター(研究所), 疫学部, 室長 (40284286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩井 直温 国立循環器病センター(研究所), 疫学部, 部長 (30242978)
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Keywords | ナノ材料 / 遺伝学 / 動物 / 循環器・高血圧 / 癌 |
Research Abstract |
カーボンブラックはマクロファージに対する細胞障害を持たないが、水溶性フラーレンは単独で濃度依存的に細胞障害作用があった。変成LDLである酸化LDL、アセチル化LDLと共に処置するとカーボンブラック、水溶性フラーレンの濃度依存的に細胞障害作用、増殖抑制効果が増大することが明らかになった。酸化LDLは動脈硬化発症に深く関与することが明らかになっている。今実験結果は血中にナノ粒子が存在するとマクロファージを刺激誘導し、変成LDLを取り込むことによって泡沫化する可能性を示唆した。血小板凝集能は水溶性フラーレンの濃度依存的に、また、ADP受容体を介して亢進する事を明らかにした。以上の結果と、これまでの当研究室の結果と考え合わせると、ナノ粒子は血管内皮細胞に作用するのみならず、マクロファージにも作用し、細胞障害作用、動脈硬化進展、プラークの破綻、血小板活性化、および血栓形成に関与する可能性が示唆された。 これまで、化学物質の毒性試験で培養細胞を用いたアッセイは急性効果を調べている事例がほとんどである。今回、小核試験に用いた水溶性フラーレンの濃度は1pg/ml〜1ng/mlであり、(この濃度は我々が生活している環境レベルの濃度に近いと考えられる)処置時間も最長で80日間行った。水溶性フラーレンを環境レベルに近い濃度で長期間細胞と培養すると核分裂の異常を示す小核が増大し、細胞増殖能速度が増加し、かつナノ粒子に耐性を持った細胞が出現することを明らかにした。この結果は、極低濃度のナノ粒子でさえも長期間曝露すると化学的変異原として、染色体の分配機能に作用し得ることを示唆する結果となった。
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