2007 Fiscal Year Annual Research Report
大規模疫学調査からみる学童期アレルギー疾患の実態 -この10年間の変遷-
Project/Area Number |
18590597
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠 隆 Kyoto University, 医学研究科, 非常勤講師 (00303818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 剛 京都大学, 医学研究科, 講師 (30378640)
中畑 龍俊 京都大学, 医学研究科, 教授 (20110744)
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Keywords | 小児アレルギー / 疫学調査 / 学童 / 食物アレルギー / 気管支喘息 / アトピー性皮膚炎 / アレルギー性鼻炎 / アレルギー性結膜炎 |
Research Abstract |
我々は2006年に京都市の小中学生1万3千人を対象とした小児アレルギー疾患大規模疫学調査を施行し、1996年に行った同一地域、同一手法の調査結果と比較検討した。その結果、96年当時と比べて改善しているのは喘息重症度のみであり、他のアレルギー疾患は有症率、重症度とも悪化していることを見出した。特にアレルギー性鼻・結膜炎の増加は著しく、06年における有症率は96年の約2倍に達していた。さらにスギ花粉症疑い例は約4倍となっていた。食物アレルギーについては06年が初めての調査となったが、低学年になるほど食物除去施行例は上昇しており、ここ数年での有症率の増加が示唆された。除去項目で多いのは、そば、卵、甲殻類、果物、魚、ピーナッツの順であったが、卵は年齢が上昇するとともに除去率が低下するのに対して他の品目は低下せず、小学校高学年以上で除去率が多いのはそば、甲殻類、果物、魚、ピーナッツなどの順であった(現在論文投稿準備中)。以上より、今後特に学童期に重点的に対策を考えるべきアレルギー疾患は、アレルギー性鼻・結膜炎、スギ花粉症、食物アレルギー(特にそばや甲殻類など)であると考えられた。これらの疾患に対して学童期に学校現場でスクリーニング検査を行い、ハイリスク例を抽出して早期介入を行い疾患の予防や軽減化を図ることは学校保健上きわめて重要な取り組みと思われる。 一方、肥満と小児アレルギー疾患との関連に関して、我々は96年の調査結果 データベース(京都・滋賀地域合わせて合計50,086人)を用いて解析し、従来の報告通り女子において肥満児童に喘息が多いことを確認するとともに、特に男子において肥満児童で鼻炎・結膜炎が有意に少ないことを見出した。同じアレルギー疾患であるにもかかわらずこのような背反する結果となることに関して、環境因子の影響やアディポサイトカインの免疫系に与える影響など複雑な因子が絡んでいることが推察された。
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Research Products
(4 results)