2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルコールの脳神経伝達物質に及ぼす影響-ApoEとALDH2欠損マウスによる研究
Project/Area Number |
18590637
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
JAMAL MOSTOFA Kagawa University, 医学部, 助教 (50418802)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飴野 清 香川大学, 医学部, 准教授 (50019626)
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Keywords | Alcohol / Acetaldehyde / Cholinergic function / Frontal Cortex / Aldh2(- / -)mice / ApoE(- / -)mice / Memory consolidation / Eight-arm radial maze |
Research Abstract |
従来、ヒトのアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)欠損型では飲酒後血液中に高濃度のアセトアルデヒド(AcH)産生が確認されている。我々は、ラットのAcH高産生モデル及びALDH2ノックアウト(KO)マウスを用い、脳内においても血中よりかなり低濃度のAcHが検出されること、一部は脳内Catalaseによる産生が示唆されること、AcHの中枢神経系への直接的作用を検討する必要性も明らかにした。 無拘束ラットと脳微小循環法を用いて、エタノール(EtOH)およびAcHが前頭皮質や海馬のacetylcholine(ACh)遊離を低下させ、これには、脳内のコリン作動性神経に関係する諸酵素choline acetyltransferase(ChAT)、 acetylcholinesterase(AChE)のうち、ChATのmRNAおよび蛋白質発現の低下によることを示唆する結果を得た。 さらに、EtOH摂取モデルとして0.5,1および2g/kgをwildマウス、ALDH2KOおよびアポプロテインE(ApoE)KOマウスに投与し、記憶への影響を行動学的に検討した。wildマウスは0.5g/kgで記憶の増強が最も強く、1g/kgでは減弱し、2g/kgでは対照群にまで戻った。ALDH2KOマウスは0.5g/kgで変化なく、1g/kgで著明な増加を、2g/kgで対照群よりも著明な低下を確認した。ApoE KOマウスは用量依存的な記憶の増強を認めた。EtOH投与による記憶への影響は、wild、ApoE KO、ALDH2KOマウスでそれぞれ異なり、遺伝子レベルの違いが複雑に影響していることが考えられる。 ヒトにおける飲酒後の酩酊や記憶について、ApoEレセプターやALDH2酵素の多型が関与している可能性があり、酩酊に伴う記憶や行動評価には、飲酒量のみならずこれらの遺伝的背景も考慮する必要性を示唆している。
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