2006 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌肝転移におけるインスリン様増殖因子の治療標的としての有用性
Project/Area Number |
18590678
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 心一 京都大学, 医学研究科, 助手 (90378761)
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Keywords | インスリン様増殖因子 / 中和抗体 / 家族性大腸腺腫症 / 肝転移 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでの研究から癌細胞周囲でホスト由来のインスリン様増殖因子(IGF)が癌細胞自身が産生するプロテアーゼ(特にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-7)により活性化されることが、腫瘍の発生、転移の形成に重要な役割を果たしていることを、IGF中和抗体を用い大腸癌肝転移、前立腺癌骨転移、多発性骨髄腫において明らかにしてきた。大腸癌肝転移の系以外はすべてNOD/SCIDマウスの皮下に移植したヒト成人骨を用いた実験系での評価でありこのモデルは種特異的な骨転移の系としては理想的であるが煩雑で、一度に多くの評価は困難である。そこで大腸癌の肝転移に関してよりヒトに近いモデルで治療実験を行うためNOD-SCIDマウスにヒト肝細胞を移入したマウスの作製を試みた。しかしながらキメラ率が一定しないこと、高キメラ率のマウスでもヒトIGFの発現が非常に微量であることが明らかとなり、ヒトIGFを標的とした肝転移治療のモデルとしては残念ながら不適切であった。われわれの開発したIGF中和抗体(KM1468)はヒトIGF-I/IIおよびマウスIGF-IIに対する中和活性は持つがマウスIGF-Iに対しては中和活性がない。マウス血清中のIGF-IはIGF-IIより10倍多く存在しており、よりシンプルな系で治療実験を行うにはマウスIGF-I中和抗体の作製が必須であった。数年にわたる協和発酵工業との共同研究によりマウスIGF-I中和抗体(KM1368)の作製に成功した。一方、若年で大腸に多数のポリープが発生し高率に癌化する常染色体優性遺伝疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウス(Minマウス)とMMP-7ノックアウトマウスおよび腸管でのIGF-IIコンデイショナルノックアウトマウスの交配でいずれもポリープの発生が抑えられた事実は、この疾患におけるIGF標的治療の有用性を強く示唆している。本年度はこのマウスを用いて本疾患におけるIGFの治療標的としての有用性を検討することを目的とする。現時点でこのマウスのポリープにはIGF-IIが高発現していること、ポリープ局所のIGF-IIを中和することによりポリープの発生が抑えられること、また循環血清中のendocrine IGF-Iを抑えることでもポリープの発生が減少することが明らかになりつつある。
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