2007 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌肝転移におけるインスリン様増殖因子の治療標的としての有用性
Project/Area Number |
18590678
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮本 心一 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (90378761)
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Keywords | 分子標的療法 / インスリン様増殖因子 / 中和抗体 / 家族性大腸腺腫症 |
Research Abstract |
我々は、これまでにインスリン様増殖因子(IGF)に対する中和抗体を用いて、前立腺癌、多発性骨髄腫の骨転移および大腸癌肝転移の系においてIGFの治療標的としての有用性を証明してきた。我々の開発したIGF中和抗体(KM1468)はヒトIGF-I/IIおよびマウスIGF-IIに対する中和活性は持つがマウスIGF-Iに対しては中和活性がない。よりシンプルな系で治療実験を行うにはマウスIGF-I中和抗体の作製が必須であると考え、協和発酵工業との共同研究によりマウスIGF-I中和抗体(KM3168)の作製に成功した。ただしKM1468,KM3168はいずれも高濃度を投与では血中IGFのリバウンド現象が起きることが証明され、治療実験においては少量投与の必然性が示唆された。一方、若年で大腸に多数のポリープが発生し高率に癌化する家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウス(Minマウス)とIGF活性化因子(IGF結合タンパク分解酵素)であるマトリックスメタロプロテアーゼ-7のノックアウトマウスおよび腸管でのIGF-IIコンデイショナルノックアウトマウスの交配でいずれもポリープの発生が抑えられた事実は、この疾患におけるIGF標的治療の有用性を強く示唆している。本年度はこの中和抗体を用いて本疾患におけるIGFの治療標的としての有用性を検討した。KM1468とKM3168を2系統のFAPモデルマウス(MinマウスおよびFAP1309マウス)にそれぞれ投与し、ポリープの発生抑制実験を試みた。その結果、2系統のマウスいずれにおいても、IGF-I、IGF-IIの中和によりポリープの発生が抑制され、またIGF-I/IIの両者を中和することにより相加的な効果が確認された。またIGF-Iの由来は主として肝臓であること(endocrine)、IGF-IIの由来は主としてポリープの間質(paracrine)およびポリープ自身(autocrine)であることがRT-PCRおよび免疫染色の結果から示唆された。以上よりIGF-I/IIはFAPのポリープの発生初期に重要な役割を果たしており、治療標的となりうることが証明された。
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